『脳外科医 竹田くん』という4コマ漫画が、ネット上で話題になった。実例に基づくものと言われており、作者は医療過誤被害者の親族であることが明らかになった。事実関係は別として、この漫画が「リピーター医師問題」をクローズアップさせ、現在の医療事故調査制度が不備であるという人がいるようである。
リピーター医師問題は、旧第三次試案・大綱案当時から1つの大きな課題であった。しかし、医療事故調査制度がリピーター医師問題に対応できていないというのは誤解であり、制度理解が不十分と言わざるをえない。
医療事故調査制度は、2014年6月18日に成立した医療法の改正により盛り込まれ、2015年5月8日に省令・通知が交付、2015年10月1日に施行された。そして、2016年6月24日の医療法施行規則の一部を改正する省令によって、医療事故調査制度の見直しが行われた。この制度見直しの際に、リピーター医師対策も取り入れられているのである。
医療法施行規則の改正により、「病院等の管理者は、法第6条の10第1項の規定による報告を適切に行うため、当該病院等における死亡及び死産の確実な把握のための体制を確保するものとすること」と義務づけられた。さらに、2016年6月24日づけの厚生労働省医政局総務課長通知において、「当該病院等における死亡及び死産の確実な把握のための体制とは、当該病院等における死亡及び死産事例が発生したことが病院等の管理者に遺漏なく速やかに報告される体制をいうこと」と明示されている。これを受けて、日本医療法人協会は、死亡事例の確実な把握のために、「死亡全例チェックシート」の作成を提案し、その記入例を示した。
2016年6月24日の制度見直し規定は、まさに再発防止の仕組みであり、リピーター医師のチェック機能である。『脳外科医 竹田くん』の勤務病院のモデルとなった赤穂市民病院は「死亡全例チェックシート」を整備し、病院長が死亡例を全て把握していたら、死亡事故の再発を予防することができた可能性がある。
病院管理者は、医療事故調査制度を正しく理解することが重要である。もし、管理者に遺漏なく速やかに報告する体制が整備されていたにも関わらず、情報が届かない状況が存在しているとするならば、管理者は医療従事者に対して、死亡事例の報告義務があることを再度、周知する必要がある。
小田原良治(鹿児島県医療法人協会会長、医療法人尚愛会理事長)[医療事故調査制度][リピーター医師][竹田くん]
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