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内田直樹

登録日:
2020-01-06
最終更新日:
2025-08-27
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  • 「認知症を知る“本当の専門家”とは─当事者の声に耳を傾ける」

    日本の認知症医療の第一人者であり、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」の開発者としても知られる長谷川和夫先生は、自身が認知症と診断された後に、「ボクはやっと認知症のことがわかった」と著書に記した。このことは、認知症を本当に理解するためには医学的な知識や客観的な観察だけでは不十分であり、その人自身が体験する内面の世界に耳を傾けることが重要であることを示唆している。

    そこで本稿では、2025年6月に出版された2冊の書籍を紹介したい。

    1冊目は丹野智文さんによる『認知症の私が、今を楽しく生きる理由』(中央法規出版)である。39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野さんは、認知症と診断された直後は「人生の終わり」を意識せざるをえず、引きこもった生活となっていた。しかしその後、認知症当事者との出会いをきっかけに社会とつながる道を選び、職場の理解や支援もあって全国で講演活動を行い、自らの体験を発信し続けている。『認知症の私が、今を楽しく生きる理由』では、認知症の不安を補う具体的な工夫や、認知症の人の近くにいる家族や支援者に伝えたいこと、認知症当事者同士によるピアサポートの力、絶望した診断直後からいかにして「今を楽しく生きる」ことができるようになっているのか、が記されている。

    もう1冊は、山中しのぶさんによる『ひとりじゃないき 認知症と診断された私がデイサービスをつくる理由』(中央法規出版)である。山中さんは2025年6月、一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループの代表理事となった方である。山中さんも、認知症と診断された直後はそれを受け入れられず落ち込んだ日々を過ごしていた。変わるきっかけとなったのが丹野智文さんとの出会いであり、その後はデイサービスを立ち上げ、認知症になっても「ひとりじゃない」と思える居場所づくりがおこなわれている。これらの経緯について著書の中で詳しく記されており、明るい山中さんのお人柄が表れた1冊となっている。

    紙面の都合で詳しい内容までお伝えすることはできないが、樋口直美さんによる『誤作動する脳』『私の脳で起こったこと』や、さとうみきさんによる『認知症のわたしから、10代のあなたへ』も、それぞれ自信を持ってオススメする。

    内田直樹(医療法人すずらん会たろうクリニック院長)[認知症

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