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大野 智

登録日:
2020-02-03
最終更新日:
2024-04-11
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  • 「駄洒落ですまない“健康食品で健康被害”」

    小林製薬の紅麹原料を使ったサプリメントを摂取した人に健康被害が出たことが連日メディアを通じて報道されている。3月29日には「プベルル酸」という物質が、特定ロットの製品から検出されたことも公表された。しかし、原因については原稿執筆時点で明確になっていない。1日も早い原因究明と再発防止、被害者の把握と補償が求められる。

    当該事案を踏まえて健康食品のなかでも錠剤やカプセルなどサプリメント形状のもの(以下、サプリメント)に関する注意点、特に過剰摂取のリスクについて整理してみたい。

    ■濃縮、抽出によるリスク

    サプリメントの多くは、食品に含まれる特定の成分を濃縮・抽出して作られている。一度に多くの成分を大量に摂取できることは、一見すると利便性が高まったように感じるかもしれない。しかし、脂溶性ビタミンの過剰症をはじめ、ナトリウムによる高血圧、マグネシウムによる下痢など、たとえ生命維持に必要なものであっても過剰に摂取することで弊害が起こることは、学生時代に学んだのではないだろうか。βカロテンと肺がん予防を検証したランダム化比較試験において、期待とは裏腹に肺がんのリスクが増加した報告もある1)2)。これらの試験では、βカロテンがサプリメントとして20〜30mg/日投与されていた。ちなみに食事からの摂取量は、約2〜3mg/日程度であり、桁が1つ異なることが影響を及ぼした可能性は否定できない。

    ■形状によるリスク

    「しじみ約1000個分のオルニチン」「レモン約50個分のビタミンC」といった宣伝文句を見たことがある人は多いであろう。普段の食事で「しじみ1000個」「レモン50個」は、とても食べられる量ではない。しかし、サプリメントは錠剤やカプセルの形状をしているため、誰でも容易に摂取できてしまう。さらに目安量を超えて摂取することも可能であろう。そうなると人体にどのような影響が出るかわからない。

    ■定期的な摂取によるリスク

    普段の食生活において、一般食品であれば、種類や量は日々変わるはずである。一方、サプリメントの場合、特定の製品を毎日しかも長期間摂取することになる。薬剤の単回投与と連続投与の違いはご存知だと思う。サプリメントの定期的な摂取は特定の成分が長期間にわたって体内に存在することを意味する。そして万が一、有害な成分が製品に混入していた場合、定期的な摂取が容易に人体への悪影響につながることは想像に難くない。

    本稿の最後にスイスの医師・化学者であるパラケルスス(1493〜1541)の言葉「すべてのものは毒であり、毒でないものはない。用量だけが毒でないことを決める」を紹介して筆を措きたい。

    【文献】

    1)Alpha-Tocopherol, Beta Carotene Cancer Prevention study group:N Engl J Med. 1994;330(15):1029-35.

    2)Omenn GS, et al:N Engl J Med. 1996;334(18):1150-5.

    大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法]

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