株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

長島公之

登録日:
2023-04-19
最終更新日:
2023-05-01

「医療DXが『地域医療を面で支える連携』の基盤になるために」

国の進める医療DXで可能となる医療情報の共有・連携は、日本の未来の「地域医療を面で支える連携」の基盤となることが期待できる。しかし、医療DXには大きなメリット(光)とともに、医療現場の負担や混乱などのデメリット(影)の心配も少なくない。

日本医師会がめざす医療DXの目的は、業務の効率化や適切な情報連携などを進めることで、国民・患者の皆様に、より安全で質の高い医療を提供するとともに、医療現場の負担を減らすことである。医療DXの中核となる「全国医療情報プラットフォーム」では、医療全般にわたる情報について、従来の方法よりもより正確・迅速・網羅的に、また現場の負担が少なく共有・交換が可能になる。これを、地域の医療機関間の連携とネットワークによる「地域における面としてのかかりつけ医機能」の発揮に役立てることで、地域医療を面で支える連携の基盤になりうる。これは、地域医療にとって大きな光である。

一方、影を減らす対策としては以下の各項目が挙げられる。

(1)医療DXの推進に必須となる国民と医療関係者の積極的な参加がまず十分ではないので、効果などの意義を周知し、理解を得る必要がある。

(2)変革を拙速に進めた場合には、肝心な地域医療提供に混乱や支障を来す危険性がある。医療現場の状況をよく確認しながら、有効性と安全性を確保したうえで、利便性、効率性の実現をめざすべきである。

(3)医療DXに対応できない国民・医療者が不利益を受ける心配がある。誰一人取り残さないために、ITを使いやすくする、使えない人のサポートを行う、ITリテラシー向上を図るなどの対策が重要となる。

(4)医療現場の作業・費用負担が過大になれば、医療提供に支障を来すので、負担を最小限にする工夫が大切となる。

(5)サイバー攻撃のリスクに関する国民・医療現場の不安があるので、国の手厚い支援が必要となる。

(6)全国医療情報プラットフォームは、鉄道で言えば「新幹線」であるのに対し、既に全国各地で稼働中の地域医療連携ネットワークは生活に密着した「ローカル線」である。各地域の実情に応じて、両者の上手な組み合わせによる併用の工夫を促す必要がある。

日本医師会は上記の観点から、国民と医療現場にとっての光が増えるように全面的に協力するとともに、影ができるだけ減るようにしっかりと提言していきたいと考えている。

長島公之(日本医師会常任理事)[全国医療情報プラットフォーム]光と影] 

ご意見・ご感想はこちらより

過去記事の閲覧には有料会員登録(定期購読申し込み)が必要です。

Webコンテンツサービスについて

過去記事はログインした状態でないとご利用いただけません  ログイン画面へ
有料会員として定期購読したい 定期購読申し込み画面へ
本コンテンツ以外のWebコンテンツや電子書籍を知りたい  コンテンツ一覧へ

関連記事・論文

もっと見る

page top