株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

上野智明

登録日:
2025-07-18
最終更新日:
2025-07-25

「医療DX①:医療DXの概要について」

「医療DX」という国の動きには、先生方の関心もここ数年で高まってきているようです。昔から医師会のIT関連の仕事を主とし、現在は医療DX政策の一角である診療報酬改定DXのお手伝いをしています。そのこともあって、開業されている先生方からは「(医療DXで)具体的に何をすればよいのか?」を、わかりやすく説明してくれというご要望(難題)を頂くことも増えてきました。その中でも、国の進める標準型電子カルテへの関心はきわめて高いです。本稿では、医療DXの全体像の説明をさせて頂いた上で、次稿では標準型電子カルテの最新情報をお伝えする予定です。その後、電子処方箋や診療報酬改定DX、セキュリティなど今般の医療DX政策に関する話題を分野ごとにわけて続けたいと考えています。

全国規模での社会実装に至った医療のIT化政策は、とても少ないです。マイナカードの前身とも言える社会保障カードの話や、「どこでもMY病院」という政策が謳われたこともありました。今般の医療DX政策は、砂上の楼閣となってきた過去の繰り返しではなく、国がまずインフラを固めた上に成り立てようとしていることに、これまでとの大きな違いがあります。ここでいうインフラとは、被保険者証の記号番号に家族の枝番をつけたことで実現させた医療分野専用の悉皆性のあるID配布と、そのオンライン資格確認のためにセキュアな回線でほぼすべての医療機関をネットワークでつないだことです。既にこの仕組みは大地震や大雨などの災害地域で一時的に被災患者の服薬履歴の確認を可能にしたり、救急医療の現場で活用するなど役立ち始めています。さらに平時は、オンライン資格確認の仕組みの中で、これまで地域医療連携などで手間のかかっていた患者の同意をとることが可能になりました。

医療DX政策では、このインフラの上で全国医療情報ネットワークを展開しようとしています。これは、将来的には診療に関する情報のみならず、特定健診や介護、地方自治体の持つ住民健診やワクチン接種履歴、医療費助成情報などを、デジタル庁を介して医療機関で共有し、国民はスマホのマイナポータルサイトで自身の情報を確認できるというものです。さらには、公衆衛生や産業の振興に資する二次利用までの大きな絵が描かれています。全国医療情報ネットワークの中でも患者の診療情報のやりとりに関わる部分は、電子カルテ情報共有サービスと呼称されています。これは現時点では、紹介状や退院時サマリ、アレルギーなどの情報を、コンピュータで交換可能な国の定める規格でやりとりするものです。標準型電子カルテもしくはその標準仕様では、電子カルテ情報共有サービスと情報をやりとりする機能が必須となります。

次稿は、標準型電子カルテの最新情報をお伝えします。

上野智明(日本医師会ORCA管理機構株式会社取締役副社長)[医療DX

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