重症疾患に罹患してから社会復帰を成し遂げられるのは、「3人に1人以下」であると言われています。たとえば、新型コロナに罹患し、重症となって長期的に身体機能が低下して、家に閉じこもりがちな患者さんを誰がどのようにみていけばよいのでしょうか。熱傷や中毒でICUに入室し、退院してからも身体機能障害が続いている患者さんをどの診療科がフォローするのでしょうか。
そういった患者さんをみていく外来を、「PICS外来」と言います。PICS外来では、医師だけでなく、看護師や理学療法士、栄養士、臨床心理士など、多くの職種の方が、患者さんがPICSを克服することを目標に、日々戦っています。日本でPICS外来を実践している施設は、非常に限られるので、多くの方は初めて聞く言葉かと思います。
このPICS外来は、普通の外来とどのように違うのでしょうか。普通の外来とは、風邪や生活習慣病などを、かかりつけの先生にみてもらって通院するようなところです。または、手術後の患者さんが定期的に手術部位の状態をフォローしにくるところです。あくまで多くの外来は、病気をみるために機能しています。
しかし、病気が治ったけれど、PICSになってしまい、退院後も長期間、身体・認知・精神機能障害が続いている患者さんを誰がフォローするのでしょうか。そういった患者さんを長期的にフォローするのが、PICS外来の役目です。つまり、病気をみるのではなく、その人が人としてどのように社会へと戻っていくか、に取り組んでいるのです。
全6回にわたる本連載で、日頃のウォーキングや筋トレ、ICUでの栄養やリハビリの重要性について執筆してきました。しかし、こういった取り組みをしても、PICSで苦しんでいる多くの患者さんがいます。一度PICSになると、元通りの生活に戻ることは容易いことではありません。しかし、私たちが諦めずに戦い続けることで、いつか「ゼロピックス」の社会を実現できると信じています。みんなでめざしましょう、誰もが社会復帰できる時代を。
中西信人(神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野)[救急医学][PICS][ゼロピックス]
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