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【識者の眼】「医療DX②:標準型電子カルテについて」上野智明

上野智明 (日本医師会ORCA管理機構株式会社取締役副社長)

登録日: 2025-08-25

最終更新日: 2025-08-22

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本稿は、標準型電子カルテについての情報になります(2025年8月15日時点)。

今般の医療DXは、国が電子カルテそのものをつくるという政策が飛び出したことで、非常に注目され、期待値も高いようです。これは、標準型電子カルテα版と呼ばれ、2025年度からの普及が期待されていました。しかし、2025年8月現在も開発・改良が続いており、2026年度末の完成が予定されています。

今後の予定を整理しますと、無床診療所向けの標準型電子カルテの完成は前記の通り、2026年度末になります。それと平行して、医科診療所向けの電子カルテの標準仕様が2025年度中に策定され、民間電子カルテ事業者に対して標準仕様への準拠が促されることになります。また、中小病院向けについても、2025年度中を目途に病院情報システムの基本要件を策定し、2026年度以降は基本要件の詳細化、2028年度から標準に準拠した民間システムの提供が始まる予定です。病院情報システムならびに標準型電子カルテの標準仕様では、様々な部門システムや検査オーダ、医事会計等を、標準のAPI(application programming interface)で連携することがスコープに入っています。

標準型電子カルテ普及の目的は2つあり、「標準規格による電子カルテ情報共有サービスとの連携」と、「高コスト体質への取り組み」です。標準規格は、すべてクラウド上での稼働が前提です。特に病院におけるオンプレミス(院内設置型)システムの個別カスタマイズ等による高コスト構造が問題視され、クラウドシステム共同利用への移行による、費用の低減・上昇抑制をめざしています。圧倒的にオンプレミス型の病院情報システムが多い中、次回システム更改時に、医療情報化支援基金を活用するなどして、電子カルテ情報共有サービスならびに電子処方箋への対応が促される予定です。

今後は、電子カルテ導入済みの医療機関と既存メーカーの製品には標準準拠をするように促し、未導入の医療機関に対しては、電子カルテの導入が促されることになります(2023年の医療施設調査で、電子カルテ未導入の診療所は45%、200床未満の病院では41%)。電子カルテ導入に対する具体的な普及計画は、2025年中にとりまとめられることになっています。「医療DXの推進に関する工程表」においては、「遅くとも2030年には、概ねすべての医療機関において、必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」とされています。先般行われた日本医師会の「紙カルテ利用の診療所の電子化対応可能性に関する調査」では、54.2%の診療所が電子カルテの導入が不可能と回答し、電子カルテの義務化はすべきではないと発表されました。地域医療の先生方の高齢化が進み、ITに不慣れ、入力を補佐する職員の確保の困難さ、引退まで数年しかない、など納得できる理由でした。

次稿は、電子処方箋を中心にした話題をお届けしたいと思います。

上野智明(日本医師会ORCA管理機構株式会社取締役副社長)[医療DX][電子カルテ

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