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良性軟部腫瘍[私の治療]

No.5218 (2024年04月27日発行) P.48

坂本昭夫 (京都大学大学院医学研究科運動器機能再建学特定准教授)

登録日: 2024-04-29

最終更新日: 2024-04-23

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  • 良性軟部腫瘍は年単位,悪性の場合は月単位の増大傾向であり,数週間~数日の増大は感染などの炎症を考慮する。
    炎症性疾患としてリンパ節腫脹を疑う場合は,外傷歴を聴取する(ネコひっかき病など)。結節性筋膜炎は炎症性腫瘤であるが,上肢屈側に多く,約3週間増大し,その後縮小する。軟部腫瘍は通常,良悪性にかかわらず痛みを伴わない。痛みを伴う場合,血管性や神経性が考えられる。血管腫は血管奇形であり,部位や広がりは様々で,静脈性が多く,四肢の場合,駆血帯にて増大する。血管平滑筋腫は痛みを伴う皮下小腫瘤である。神経鞘腫は神経に沿って発生し,Tinel様サインは放散痛を特徴とする。診察での境界明瞭,可動性良好は良悪性と無関係である。
    皮下腫瘍は筋膜より浅部の皮下組織発生を指す。深部発生(筋膜より深部)の5cm以上の腫瘍は悪性を疑うが,小さな皮下腫瘍が良性とは言えない。手関節背側の球状の腫瘤はガングリオン(囊腫)を考える。肩周囲皮下のやわらかい腫瘍は皮下脂肪腫を考える。膝窩部腫瘤はベーカー囊腫の可能性があり,Foucherサイン(膝伸展で緊満,屈曲で軟)を特徴とする。膝関節腫脹(水腫,血腫)は,びまん型腱滑膜巨細胞腫(色素性絨毛結節性滑膜炎)の可能性がある。一方,限局型腱滑膜巨細胞腫は手指や足趾に好発する腱鞘巨細胞腫のことである。足底部の腫瘤は足底線維腫で,可動性不良,多発,両側性の場合もある。背部腫瘤は類上皮囊腫を考える。特徴は表皮との可動性に乏しいことである。

    ▶診断のポイント

    良性軟部腫瘍の画像診断はMRIが有用である。腫瘍の特徴がわかれば,単純X線検査やエコー検査も有用である。MRI所見で,リンパ節腫脹は多発腫瘤としてみられるが,高齢の場合,悪性リンパ腫の可能性がある。

    結節性筋膜炎は筋膜上の3cm未満の腫瘤で,周囲の炎症所見を呈し,粘液線維肉腫との鑑別は難しい。血管腫は,単純X線画像にて静脈石と隣接骨増生がみられる。血管腫のMRIは血管構造(内部無信号:フローボイド)や囊腫部の血液沈降によるfluid-fluidレベルがみられ,脂肪組織混在のため筋肉より高いT1信号を持つ。血管平滑筋腫は皮下の小腫瘤で,多数の小血管構造を呈し,脂肪成分を含むことがあるが,平滑筋肉腫との鑑別は難しいことがある。神経鞘腫はT2にて中心低信号(ターゲットサイン)と近位・遠位に脂肪を認めるsplit fatサインを認める。

    ガングリオンは粘液状内容物を反映し,T2にて脂肪より高信号を呈する。皮下脂肪腫はMRIにて皮下脂肪と類似するが,大腿深部発生の大きな脂肪性腫瘍は異型脂肪腫様腫瘍の可能性がある。ベーカー囊腫は腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間より関節と連続する囊腫としてみられる。びまん型腱滑膜巨細胞腫は,T2低信号で,出血を反映しT2でも低信号を呈する。滑膜炎との鑑別が難しく結節性病変を伴うことにより診断する。限局型腱滑膜巨細胞腫(腱鞘巨細胞腫)は,びまん型腱滑膜巨細胞腫と同様にT2低信号を呈する。足底線維腫は足底腱膜と連続するT2低信号を呈する。類上皮囊腫は内部への囊腫壁の剝がれ,内部不均一(デブリサイン)を認める。

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