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レジデントのための整形外科診療 脊椎

和歌山医大流脊椎診療の思考のプロセスがわかる

定価:5,500円
(本体5,000円+税)

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編: 山田 宏(和歌山県立医科大学医学部整形外科学講座 教授)
判型: B5変型判
頁数: 174頁
装丁: カラー
発行日: 2024年03月09日
ISBN: 978-4-7849-0527-0
版数: 第1版
付録: 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)

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◆脊椎診療のプロフェッショナルが「読者が自分たちのレジデントだったらどんな指導をすべきか」を極限まで考えて生み出した一冊。
◆整形外科レジデントが学ぶべき診療ルーチンと患者への心構えがわかります。
◆本書を読めば、和歌山医大流脊椎診療のワザが身につきます!

診療科: 整形外科 整形外科

目次

1 頚部神経根症(ヘルニアを含む)
2 頚椎症性脊髄症
3 骨粗鬆症性椎体骨折
4 腰椎椎間板ヘルニア
5 腰痛症(仙腸関節痛を含む)
6 腰部脊柱管狭窄症
7 靱帯骨化症(OPLL,OLF,DISHを含む)
8 脊柱側弯症
9 脊椎分離症(スポーツによるL5疲労骨折など)
10 腰椎変性すべり症中
11 成人脊柱変形(腰曲がり)
12 脊椎腫瘍
13 脊髄腫瘍
14 脊椎外傷
索引

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序文

序文に代えて
本書は,「読者の皆様が,我々のレジデントだったら,どのような形で指導すべきか?」を念頭に置き,是非知っておいてもらいたい脊椎診療ルーチンと患者さんに対する心構えをできる限り盛り込むように心がけました。また,若い先生方が,「病気を診て患者を診ない医師になって欲しくない」という強い思いを込めて,我々は本書を書かせていただいています。なぜそのような思いに至ったのか。それがよくわかる症例を提示いたします。

ついこの間,画像に明らかな異常がないことを理由に,ろくに患者さんの話も聞かず,そして身体を触って身体所見を取らずに,4年もの長きに渡り単に飲み薬や湿布を出すだけでほったらかしにされていた患者さんが私の下に救いを求めてきました(表1,図1,図2 本紙参照)。

さて,いかがでしょうか。この患者さんの診断はついたでしょうか。
薬や湿布を出すのは, 専門性にかかわらず医師であれば誰でもできます。今の時代,別にわざわざ病院に行って医師に頼らなくても,患者さん自身が薬局で手に入れることもできます。担当医師の最も反省すべきところは,患者さんが何を求めて自分のところに来てくださっているのかについてまったく理解できていない点に尽きます。「整形外科の先生なら,きっと自分の身体の悪いところを見つけてくれて,痛みを取ってくれるに違いない。」と期待して,わざわざ大切な時間とお金をかけて来てくれているわけですから,我々整形外科専門医は,誠実にこの思いと向き合う必要があります。
本症例に対する,我々の診断と治療は下記の通りです。画像異常は必ずしも痛みやしびれの原因になりませんから,まずは患者さんの訴えと身体所見から予想される責任病巣に対して各種ブロック療法を駆使し,目の前の患者さんを苦しめている痛みやしびれの軽減に努めるとともに発生源を特定する必要があるでしょう。よって,我々は右L5神経根ブロックを追加実施しました(図3 本紙参照)。ブロック後に患者さんと一緒に歩かせて頂くと,完全に間欠跛行が消失していることが確認できました。この一連の手続きで,本症例は,右L5神経病変であることが確定できました。しかし,効果は一時的であったために,脊椎内視鏡下手術を計画しました。ピンポイントで手術を行うために,3次元MRIを撮像し病変を探索しました(図4 本紙参照)。その結果,L5-S1レベルの椎間孔内で健側では明瞭に描出されている後根神経節が浮腫性腫脹のために不明瞭化し,その以遠で腰神経が圧痕されている像を捕らえることができました。これは,典型的な椎間孔外狭窄の画像です。そもそも2次元画像である単純MRIでは,脊柱管から椎間孔外へかけて3次元な走行を示す腰神経の異常を捕らえることには限界があります。傍正中矢状断像では椎間孔内の異常は検出できますが,椎間孔外の異常は診ることができません。担当医は,この基本的な知識が欠如していたことも大いに反省すべき点でした。いずれにしても,現在の症状を説明できる画像異常に対して各種ブロック療法を用いた機能的診断で症状消失を証明できて初めて,治療への指針を確実に得ることができます。これが脊椎診療の基本です。
私が今の医療事情を一番憂いている点は,「病気を診て患者を診ない」若い医師が増えていることです。あなたは,エビデンス重視,ガイドライン重視,マニュアル重視の医師になっていないでしょうか。この問題点は,和歌山医大のホームページの専門医育成ポリシーにも書かせていただいていますので最後にご紹介させていただきます。


EBMは, 観察対象となる集団の治療法の優劣であり, 個々の患者にとって最良の方法を見出すためのものではありません。EBMは,あくまで治療法選択時の参考資料と認識し,医師個人のこれまでの臨床経験を生かして患者の病態や特徴など個性を考慮に入れた上での判断が必要であると私個人は固く信じています。
昨今,多くの識者たちが嘆かれているように,ガイドラインやマニュアルに沿った診療しかできない,病気を診て患者を診ない医師が増えているような気がします。現代医療が失った大切なものを取り戻すために必要なのは「内外合一・
活物窮理」の精神ではないでしょうか?
(和歌山県立医科大学整形外科学講座 専門医育成ポリシーより引用改変)

本書の読者の先生方が本症例のような患者さんを診たときに,しっかりと話を聞き,体を触って身体所見をとる,本当の脊椎診療ができるようになる一助となれば幸いです。
2024年1月
山田 宏

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