肩関節不安定症に分類され,外傷性に起因する肩関節脱臼とそれに続発する反復性肩関節脱臼が代表的疾患である。外傷性脱臼の中では手指関節脱臼についで頻度が高い。
前方脱臼が90%以上を占める。転倒や転落,柔道やラグビーなどのコンタクトスポーツで肩関節の外転外旋や水平伸展が強制されると,上腕骨頭はてこの原理で前方へ脱臼する。激痛のため肩関節の自動運動は不可となる。外見上,肩関節外側の輪郭は丸みが消失しており,触診で脱臼した骨頭を肩関節前下方に触れる。
一度外傷性脱臼を起こした後に脱臼を繰り返す反復性脱臼は,若年者ほど起こりやすく,10歳代で初回脱臼を起こすと80~90%が反復性に移行すると言われる。病態は関節唇−下関節上腕靱帯(IGHL)複合体の損傷であるBankart損傷が多い。日常生活において手を後方へ回す動作で骨頭前方に疼痛や違和感があるほか,徒手検査で他動的に外転外旋位をとると脱臼が誘発されて不安感を訴える(anterior apprehension test)。
単純X線像では下内方に偏位した上腕骨頭のほか,大結節や関節窩前縁の骨折がみられることがあり,関節窩の評価には菅谷の新撮影法が有用である1)。3D-CTでは,しばしば関節窩骨欠損や上腕骨頭の陥没骨折(Hill-Sachs損傷)がみられる。MRIではBankart損傷を認めることが多いが,年齢が上がるに従い腱板断裂の合併が増加することを念頭に置く。
初回脱臼であれば,可及的に整復した後に外固定を3週間行う。上記治療後も脱臼を繰り返す,または陳旧性反復性脱臼であれば,関節唇−IGHL複合体の機能不全が疑われるため,同部位の外科的修復が必要となる。
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