外傷性頸部症候群は,頸部に外力が加わった際に生じる障害を総称しており,その多くの要因は自動車の交通事故である。外傷性頸部症候群は「頸部外傷によって生じた頸椎および神経系の構築学的ならびに神経学的帰結であり,運動および神経機能の多彩な異変のみならず,精神神経学的ならびに耳性学的,視覚平衡機能障害を伴いうる症候群」1)とされている。
病歴聴取,身体機能評価,単純X線評価,質問紙評価ツールを用いる。外傷性頸部症候群の重症度は,Quebec Task Force Classificationを用いて分類される。重症度GradeⅢ以上では,画像診断(CT,MRI)と検査(EEG,EMG,神経伝導検査)を行うことが推奨される。
Grade 0: 頸部の愁訴なし,理学所見の異常なし
GradeⅠ: 頸部の疼痛,硬直,または圧痛の愁訴のみ,理学所見の異常なし
GradeⅡ: 頸部の愁訴と骨・筋肉症状の存在(関節可動域の制限や圧痛点など)
GradeⅢ: 頸部の愁訴と神経学的所見の存在(深部腱反射の低下・消失,筋力低下,知覚障害など)
GradeⅣ: 頸部の愁訴と骨折または脱臼
外傷性頸部症候群患者は,衝突に伴う力学的負担が小さい交通事故においても,症状が長引くことが少なくない。組織損傷に伴う侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛のみではなく,心理社会的要因が症状に影響を及ぼす可能性に注意しながら,治療を行う必要がある。
残り1,588文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する