株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

脆弱性骨盤骨折(FFP)の診断のポイントと標準的な治療は?

No.5197 (2023年12月02日発行) P.50

原口直樹 (聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院教授/病院長)

依光正則 (岡山大学学術研究院医歯薬学域 運動器外傷学講座講師)

登録日: 2023-11-30

最終更新日: 2023-11-28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 超高齢社会であるわが国で増加傾向にある脆弱性骨盤骨折を見逃さないための診断のポイントと標準的な治療方法について,岡山大学・依光正則先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    原口直樹 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院教授/病院長


    【回答】

    【診断には骨盤正面X線撮影が必須で,CT検査が不可欠。TypeⅠ,Ⅱは保存治療,TypeⅢ,Ⅳは手術治療を推奨】

    (1)診 断

    脆弱性骨盤骨折(fragility fractures of the pelvis:FFP)は,骨盤の骨密度の減少に伴い強度が低下することで生じ,人口の高齢化に伴いその発生は増加しています。FFP患者の多くは,転倒などの軽微な外傷の既往とそれに続く骨盤部の疼痛を主訴として救急を受診します。認知機能が低下した患者では転倒の記憶が定かでない場合もあります。

    疼痛の程度は様々で,体動困難例から短距離歩行が可能な例まであり,過小に評価されないように注意が必要です。痛む部位も,骨折の局在によって,鼠径部や腰部,臀部など様々です。

    FFPは高エネルギー外傷に伴う骨盤骨折とは異なったメカニズムで生じています。多くは靱帯の損傷は伴わず,骨盤輪の顕著な不安定は認めません。臨床的にFFPが疑われる患者には骨盤正面X線撮影が必須であり,必要に応じて入口および出口撮影を行いますが,仙骨骨折の転位は評価困難な場合が少なくありません。不安定性を予測するためには,正確な骨折の診断が要求されることからCT検査は不可欠です。受傷から時間の経過したFFPでは骨折部に仮骨形成を伴っている症例もあり,CTで正確に把握することが可能です。

    MRIは,FFPを診断する上で最も感度の高い検査であり,仙骨内の骨挫傷や転位のない骨折を発見することができます。しかし,全例でMRIを撮影しているわけではなく,CTで患者の愁訴を説明できるような所見が得られなかった場合にのみ撮影しています。

    残り512文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・整形外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療体制の救急告示病院として救急患者を受け入れています。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問診療、訪問看護、訪問介護体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top