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坐骨神経痛[私の治療]

No.5084 (2021年10月02日発行) P.41

千葉一裕 (防衛医科大学校整形外科学講座教授)

登録日: 2021-10-01

最終更新日: 2021-09-29

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  • 坐骨神経痛は,臀部から下肢にかけて出現する痛みやしびれを指す症状名である。坐骨神経は第4腰神経~第3仙髄神経で構成されるが,多くは腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの退行変性疾患によって第5腰,第1仙髄神経根が圧迫・刺激されることで生じる。時に脊椎や神経の腫瘍,感染,外傷や骨粗鬆症性椎体圧潰など重篤な疾患によって生じるため,注意が必要である。

    ▶診断のポイント

    臀部から大腿後面,さらに下腿外側から足背(L5)あるいは下腿後面から足底(S1)にかけて電気が走るような鋭い痛み,ビリビリとしたしびれ,時として灼熱感や締め付け感,重だるさ,脱力などが生じる。多くの場合,長時間の坐位・立位など特定の姿勢,前屈動作や歩行などの運動負荷で増悪し,安静で軽減する。

    脊椎疾患による神経根障害では障害された神経根に特有な領域の腱反射低下・消失,感覚障害,筋力低下を呈する。また,臀部から坐骨神経領域に沿った圧痛(Valleixの圧痛点)を認める。青壮年の椎間板ヘルニアでは痛みを避ける疼痛性側弯・跛行に加え,下肢伸展挙上試験(straight leg raising test:SLRT)が陽性となることが特徴的である。

    単純X線では,椎間板狭小や骨棘形成など非特異的な所見のみを認めることも多いが,時に椎骨の融解,圧潰,変形やすべりなどの明らかな所見を認める。いずれにせよMRI上症状を説明できる腫瘍,炎症,外傷,ヘルニア,すべりや狭窄等の器質的病変による神経の圧迫があれば,診断は確定する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まずは診断確定が第一であり,腫瘍,炎症,外傷など重篤な病変が明らかとなればその治療を優先する。椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症など退行変性疾患の場合,まず薬物,物理,装具などの保存療法が第一選択となり,多くの場合,症状は軽快する。原因にかかわらず,急性馬尾障害による進行性下肢麻痺や膀胱直腸障害を生じた例は緊急手術の絶対適応となる。また,最低6~12週の保存療法を行っても,痛み・しびれが続いて日常生活や学業・就業に支障をきたし,患者が希望する場合も手術適応となる。その場合,患者に病態,手術成績,可能性のある合併症など手術の得失をよく説明し,納得を得た上で病態に応じて髄核融解術,ヘルニア摘出術,脊椎除圧術,固定術など,最適な術式が選択される。

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