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悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)[私の治療]

No.5044 (2020年12月26日発行) P.41

川井 章 (国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科科長)

登録日: 2020-12-26

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  • 悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)は,わが国では年間約4000人程度発生していると考えられる代表的な希少癌のひとつである。脂肪,筋肉,血管などの軟部組織より発生し,四肢近位部,後腹膜などに好発する。悪性軟部腫瘍全体としては60~70歳に発生のピークを有するが,小児に好発する横紋筋肉腫,青壮年に好発する滑膜肉腫,中・高齢者に好発する脂肪肉腫,粘液線維肉腫など,組織型によってその病態,適切な治療は異なるため,正確な病理診断に基づいた最適な治療を選択することが重要である。

    ▶診断のポイント

    悪性軟部腫瘍の多くは,無痛性・弾性硬の腫瘤として発見される。大腿など四肢近位部の深部に5cm(ゴルフボール)より大きい腫瘤を認めた場合には,悪性軟部腫瘍を疑い,MRIなどの画像検査を行うとともに,専門医へのコンサルテーション,紹介を検討することが望ましい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    悪性軟部腫瘍には数十種類の組織型があり,悪性度や局所浸潤傾向もそれぞれに異なるため,適切な治療法選択のためには,正確な病理診断が不可欠である。針生検または切開生検によって病理診断を確定した後に治療を開始する。生検にあたっては,CTやMRIで腫瘍の局在を十分吟味し,主要な神経・血管束や関節を腫瘍細胞で汚染しないよう配慮するとともに,根治手術の際に生検ルートも併せて切除可能となるようアプローチを決定する。

    悪性軟部腫瘍の治療の基本は,腫瘍を周囲の正常組織とともに一塊として切除する広範切除である。局所再発をきたさないために必要十分な範囲を切除し,なおかつ,より良好な機能を残すために切除範囲を必要最小にとどめることが肝要である。手術単独では十分な切除縁の確保が困難と考えられる症例に対して,再発予防を目的として周術期放射線治療の併用を考慮する。また,手術単独では転移・再発のリスクが高いと考えられる症例,切除不能・進行再発例に対しては抗癌剤による薬物治療が選択される。悪性軟部腫瘍は,放射線治療や薬物治療に対する感受性から,円形細胞肉腫と非円形細胞肉腫に大別される。円形細胞肉腫は,ユーイング(Ewing)肉腫や横紋筋肉腫など組織学的に小円形の腫瘍細胞からなる高悪性度の腫瘍であり,薬物治療に対する感受性が高く,治療に際しては原発巣の根治術とともに多剤併用化学療法の実施が必須である。一方,非円形細胞肉腫は,脂肪肉腫,平滑筋肉腫,滑膜肉腫など紡錘形や多形性の腫瘍細胞からなる軟部腫瘍であり,円形細胞肉腫よりも中・高齢者に好発し,薬物治療に対する感受性は低い。非円形細胞肉腫に対するキードラッグは,ドキソルビシンとイホスファミドであり,近年,パゾパニブ,トラベクテジン,エリブリンなど新たな薬剤が開発されている。

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