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強直性脊椎炎[私の治療]

No.5013 (2020年05月23日発行) P.53

冨田哲也 (大阪大学整形外科准教授)

登録日: 2020-05-21

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  • 体軸性脊椎関節炎の代表的疾患である。脊椎関節炎は炎症性背部痛,末梢関節炎,付着部炎,指炎,ぶどう膜炎,乾癬,炎症性腸疾患などの多彩な臨床症状とHLA-B27陽性である遺伝的な背景など,共通の関連因子を有する疾患群である。特に強直性脊椎炎は1970年代よりHLA-B27との強い関連が示され,HLA-B27保有者が極端に少ないわが国では稀な疾患であり,2015年に国の難病に指定されている。10~20歳代の男性に多く発症し,わが国での患者数は3000人程度と推定されている1)

    ▶診断のポイント

    診断は,臨床症状として①腰背部の疼痛,こわばり(3カ月以上持続,運動により改善し,安静により改善しない),②腰椎可動域制限(Schober試験で5cm以下),③胸郭拡張制限(第4肋骨レベルで最大呼気時と最大吸気時の胸囲の差が2.5cm以下)の3つのうち,1項目以上を満たし,仙腸関節X線(0度:正常,1度:骨縁の不鮮明化,2度:小さな限局性の骨びらん,硬化,関節裂隙は正常,3度:骨びらん,硬化の進展と関節裂隙の拡大,狭小化または部分的な強直,4度:関節裂隙全体の強直)で,両側2度以上あるいは片側3度以上の所見を認め,鑑別診断を除外できれば強直性脊椎炎と診断する。

    仙腸関節X線の読影は時に難しく,3次元的な解剖を理解した上で,正面像のみでなく斜位像も参考にする。CT,MRIも有用である。アキレス腱付着部炎や末梢関節炎として股関節,肩関節,膝関節に認められることが多い。上記仙腸関節X線基準を満たさない場合,non-radiographic axial spondyloarthritis(X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎)と考えられ,仙腸関節でのMRIによる炎症所見が重要となる。X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎は,強直性脊椎炎に進行する場合としない場合があるとされているが,日本での移行率は不明である。血液検査では基本的にリウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体は陰性であり,炎症反応も全例では陽性にならない。HLA-B27は陽性のことが多い。関節外症状として,ぶどう膜炎や炎症性腸疾患に注意する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    強直性脊椎炎の治療は,疼痛やこわばりをはじめとする様々な炎症性症状をコントロールし,靱帯骨化の進行を抑制して体軸,末梢関節機能を維持しQOLを最大限とすることである。治療目標の設定には,疾患活動性指標であるBASDAIまたはASDASにより評価を行い,BASDAIは4未満を,ASDASは2.1未満を目標とする。

    治療方針の決定には患者と医師との間で共通認識を持つことが重要であり,重症度,関節外症状や合併症の有無,社会的心理的背景,経済性などを考慮する必要がある。さらに,患者は強直性脊椎炎と診断されたときから将来に対して大きな不安を抱くようになるため,十分な患者教育を行い,患者の不安をできる限り軽減することは重要な治療戦略のひとつである。喫煙は強直性脊椎炎の予後不良因子の代表であり,喫煙者には禁煙指導を行う。運動療法も重要で,症状の緩和,関節可動域や姿勢の維持などの効果が期待できる。日本脊椎関節炎学会のウェブサイトに強直性脊椎炎患者向けの運動療法を公開しているので参照されたい。

    薬物療法については国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)により示されており,第一選択薬として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用する。効果があれば継続することが推奨されている。NSAIDsが使用できない場合はアセトアミノフェンや弱オピオイドなども考慮する。副腎ステロイドホルモンの全身投与は推奨されない。症状の強い局所への注射は有効である。抗リウマチ薬(DMARDs)は基本的に強直性脊椎炎には無効であり,これらの治療で十分な疾患活動性のコントロールが得られない場合(BASDAIは4以上,ASDASは2.1以上で)生物学的製剤を考慮する。CRP上昇やMRIでの炎症所見なども考慮する。

    TNF阻害薬であるインフリキシマブ,アダリムマブ,IL-17阻害薬であるセクキヌマブ,イキセキズマブが使用可能である。最新のASASの推奨では,TNF阻害薬とIL-17阻害薬は並列になっている。ただしIL-17阻害薬を考慮する際には,ぶどう膜炎や炎症性腸疾患の既往歴には注意が必要である。生物学的製剤には構造的変化進行抑制効果も報告されている。

    末梢関節の関節破壊が進行した場合には外科的治療も検討すべきである。また,強直性脊椎炎では骨粗鬆症も進行することが知られている。脊椎の強直が進行し可撓性が失われている場合,軽微な外力でも大きなモーメントがかかるため,脊椎損傷をきたす場合がある。軽微な外傷でも麻痺の進行は速いことが多い。さらに,外科治療の際には挿管が困難なことが多く,十分な注意が必要である。

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