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半月板変性断裂に対する関節鏡視下半月板部分切除術(APM)は無効?

No.4926 (2018年09月22日発行) P.55

池内昌彦 (高知大学整形外科教授)

登録日: 2018-09-25

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【シャム手術を上回る効果はなく,保存治療を優先すべきである】

関節鏡視下半月板部分切除術(APM)は,整形外科手術の中で最も多く行われている手術のひとつである。半月板の断裂片を切除することで,疼痛やひっかかり感,ロッキングといった症状が改善すると考えられている。壮中年期の患者に対するAPMは,主に半月板の変性断裂に行われている。壮中年期の半月板変性断裂は変形性膝関節症の一所見とみなせることが少なくない。

既に変形性膝関節症に対するAPMの無効性を示すエビデンスがあり,行わないことを勧めるガイドラインが存在する1)。さらに,変形性膝関節症のない半月板変性断裂に対するAPMに関しても否定的な報告が散見される。フィンランドで行われた多施設共同臨床試験では,146人(35~65歳)の変形性膝関節症のない症候性内側半月板変性断裂患者をランダムに2群にわけ,APMかシャム手術が行われた。術後1年時の臨床スコアおよび膝痛を比較した結果,APMはシャム手術を上回る効果はなく,APMの有効性は否定された2)

近年の高齢化社会に伴い,壮中高年のスポーツブームはますます活発になっている。この年代における半月板の変性断裂像は偶発的な所見であり,症状の主因と特定することは難しい。外傷の既往やロッキングを認めない半月板変性断裂に対する治療は,APMではなく運動療法や投薬などによる保存治療を優先すべきである。

【文献】

1) Siemieniuk RAC, et al:Br J Sports Med. 2018; 52(5):313.

2) Sihvonen R, et al:N Engl J Med. 2013;369(26): 2515-24.

【解説】

池内昌彦 高知大学整形外科教授

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