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十字靱帯温存型人工膝関節全置換術(BCR-TKA)【より自然な膝関節運動が可能となり,患者満足度の向上に期待】

No.4850 (2017年04月08日発行) P.59

真柴 賛 (香川大学整形外科准教授)

登録日: 2017-04-06

最終更新日: 2017-04-04

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人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)は,高度に変形した膝関節の除痛と機能改善が得られる術式として広く普及しているが,手術を受けた約2割の患者は不満足であり,患者の術後満足度自体も人工股関節置換術に大きく劣ると言われている。その理由のひとつは,これまでの人工膝関節は少なくとも前十字靱帯を残せないため,前十字靱帯と後十字靱帯が相互作用することによる正常な膝関節動態が獲得できないからである,と考えられている。特に,前十字靱帯には膝の位置を知る関節位置覚や,移動を認識する関節運動覚などの機能が存在することから,正常な前十字靱帯が残存している症例に対して靱帯を切離して行ったTKAの満足度は低いことが判明している。

2015年に,わが国でも前後十字靱帯を温存する十字靱帯温存型TKA(bicruciate retaining TKA:BCR-TKA)が導入された。靱帯温存によって,より自然な膝関節運動が可能となり,患者満足度が向上することが期待されている。しかし,通常の人工膝関節と比較して手術手技が複雑で難易度も高いため,現時点では屍体トレーニングを受けた関節外科医に使用が限定されている。

BCR-TKAは術後の高い満足度や,膝関節動態が正常膝と同等であったとする肯定的な報告もある一方で,術中の脛骨顆間隆起骨折や,術後の可動域制限や脛骨部品の早期緩みなどの合併症の報告も存在する。

【解説】

真柴 賛 香川大学整形外科准教授

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