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手指PIP関節の変形性関節症(ブシャール結節)に対する治療

No.4782 (2015年12月19日発行) P.61

平瀬雄一 (四谷メディカルキューブ手の外科・ マイクロサージャリーセンター センター長)

登録日: 2015-12-19

最終更新日: 2016-11-10

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【Q】

手指近位指節間関節(proximal interphalangeal joint:PIP)の変形性関節症〔ブシャール(Bouchard)結節〕には,これまでなかなか良い手術方法がありませんでした。各種関節形成術が行われていますが,手術成績は総じて悪く,人工関節置換術を行っても,可動域,長期成績ともあまり良いとは言えません。関節固定術は痛みはなくなりますが,PIP関節が動かないとかなり不自由です。比較的簡単で,有効な方法はないでしょうか。四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリーセンター・平瀬雄一先生のご教示をお願いします。
【質問者】
森友寿夫:大阪行岡医療大学教授 行岡病院手の外科センター

【A】

50歳以降のいわゆる更年期に,PIP関節の痛み,腫脹,変形を訴えて医療機関に来院する患者はたくさんおられます。そんな人たちが医師に言われることの多くは,「年のせいです」「使いすぎです」「治りません」の3つです。これは本当でしょうか。
「年のせい」ならば,70歳以降の人には皆,同様の関節症変化がありそうなものですが,そうではありません。過去の論文での「症例が年齢とともに増えた」という記載は,実は統計学的に人口減少を加味して分析すると,発症は50~60歳代に限局していることがわかります(文献1)。また,利き手ではない指にも発症することから,決して「使いすぎ」が原因ではないことは明らかです。
それでは,治療法は本当にないのでしょうか。変形した関節を治すには人工関節しかないかもしれませんが,患者の多くが望んでいるのは「痛みが楽になって,もう少し使いやすくなればよい」ということなのです。それには簡便な非常に良い方法があります。
ブシャール結節の多くはかつて腱鞘炎があった指で,屈筋腱がA1滑車部で狭窄しています。すると,A1滑車からPIP関節末梢までの浅指屈筋腱は緊張し,PIP関節には常に慢性的な牽引がかかります。ブシャール結節指では,PIP関節が屈曲拘縮になるのはこの理由からです。そのために関節裂隙の狭窄が徐々に進行して関節軟骨の破壊が進み,やがて変形を起こすようになると考えられます(文献2)。つまり,PIP関節痛の直接的な原因は緊張した浅指屈筋腱にあるので,これを切除すればPIP関節を直接的に引っ張るものはなくなることになります。
手術は局所麻酔下で行います。指基節部PIP関節寄りに小さな斜め切開を加えて,A2滑車末梢で屈筋腱を見つけます(図1)。まずは橈側か尺側のどちらかの浅指屈筋腱を切離して,次に残った側も腱交叉まで切離します。さらに手掌のA1滑車上の小さな切開から浅指屈筋腱を見つけて,指を屈曲させると切った浅指屈筋腱が出てきます。腱を末梢へ引っ張って,できるだけ中枢で切除します。1cmほどの小さな傷が2つできますが,手術時間は7分程度です。
筆者らは157例230指のブシャール結節に同様の手術を行いました。当初は浅指屈筋腱の尺側だけの切除でしたが(文献3),20%程度に再発を認めたため現在は浅指屈筋腱の全切除としています(文献4)。その結果,痛みの程度を示すVisual Analogue Scale(VAS)は著しく改善し,90%近い症例で安静時の痛みは0となりました。また,使いやすさの指標となるValidation of the Japanese Society for Sur-gery of the Hand Version of the Disability of the Arm, Shoulder, and Hand(DASH-JSSH)scoreでも著明な改善をみました。関節の動きを示すpercent total active motion(%TAM)でも大きな改善がみられましたが,関節破壊が進んだ症例では人工関節のほうが可動域の改善には向いているようです。
痛み止めの処方だけでは病気の進行は止められません。筆者らは,手術を躊躇する患者には,まず腱鞘内と関節内へのステロイド注射を行って短期間でもよいので痛みを取り,信頼関係を構築してから切腱術を勧めています。術後はできる限りハンドセラピストのリハビリテーションを勧め,良い結果が出ています。また,この方法は遷延した難渋するばね指症例にも同様に有効です。
短時間でできて,侵襲が少なく,得るものが多い手術であると考えます。どうぞ,試みられて下さい。

【文献】


1) 戸張佳子, 他:日手会誌. 2015;31(4):461-5.
2) 平瀬雄一, 他:日手会誌. 2015;31(5):716-21.
3) Le Viet D, et al:J Hand Surg Br. 2004;29(4):368-73.
4) Favre Y, et al: J Hand Surg Am. 2012;37(11):2269-72.

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