治療は大きくわけて「経過観察」「装具治療」「手術」がある。側弯の重症度はコブ角で表し,どの治療を行うかはコブ角が1つの指針になる。骨成熟前で軽度の側弯(コブ角20°未満)の場合は,定期的(3〜6カ月に1度)なX線写真撮影で,側弯の進行を見逃さないように「経過観察」を行う。中等度の側弯(コブ角20〜40°)の場合は,装具治療を行う。装具の装着時間は骨成熟度,コブ角の大きさ,進行の程度により異なるが,最も進行の可能性が高い場合は,1日18時間の装着を目安にしている。なお,装具の装着時間と治療成功率との間には,有意な正の相関関係がある2)。装具治療をやめるタイミングに定まったルールはないが,年間の身長の伸びが1cm以内,側弯の進行なし,が一般的な条件と考える。装具治療を行っても進行を予防できず重度の側弯(コブ角40〜50°以上)に進行した場合は,脊椎インプラントを用いた矯正固定手術を検討する。
矯正固定術は高い矯正力により,重度の側弯でも良好な矯正が得られる。一方,手術の弱点は,脊柱が固定され可動性が低下することである。また固定術により,隣接椎間へのストレスが増加することも危惧される。手術のメリット,デメリットを十分に検討の上で手術を適応すべきである。まだわが国には導入されていないが,欧米では側弯矯正と脊柱可動性の温存を両立する,テターリングというポリエチレン製の紐で椎体を固定する手術法が開発され,臨床応用されている。
手術では椎弓根スクリューを主に用いた後方矯正固定術が行われている。インプラントの設置には高い正確性が求められるため,近年ではナビゲーションシステムを用いて安全に手術が行われるようになっている。インプラントの固定性は高く,また若年者の骨癒合は良好なため,術後3カ月以降,体育やスポーツの再開を許可している。
側弯症が発見された時点でコブ角が30°未満で骨成熟(リッサーgrade5)に達している場合は,特に治療は必要ない。一方,20°以上の側弯が発見され,骨成熟に達していない場合はその後の進行の可能性もあるため,専門家へのコンサルトが望ましい。
側弯症と診断されると,患者やその家族から日常生活に関する質問を受けることも多い。わが国における約2800人の女子中学生を対象とした生活習慣に関するアンケート調査の結果,側弯症と側弯症でない女子との間で,鞄の持ち方・その重量,食事内容,睡眠時間・姿勢,勉強時間・姿勢などの生活習慣に有意差はなく,これらは側弯症と関連がないことが判明した3)。そのため,日常生活においては健康な生活を心がけ,特別な配慮は必要ない旨を説明する。一方でクラシックバレエの経験,低BMIなどは側弯症患者で有意に高頻度であったため,クラシックバレエを幼少期から習っている場合ややせ型の子どもの場合は,背中の状態に注意するよう話す。
【文献】
1)Ueno M, et al:J Orthop Sci. 2011;16(1):1-6.
2)Weinstein SL, et al:N Engl J Med. 2013;369(16):1512-21.
3)Watanabe K, et al:J Bone Joint Surg Am. 2017;99(4):284-94.
渡辺航太(慶應義塾大学医学部整形外科学教室准教授)