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小児肘内障[私の治療]

No.5182 (2023年08月19日発行) P.50

関 敦仁 (国立成育医療研究センター小児外科系専門診療部統括部長)

登録日: 2023-08-17

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  • 転びそうになった幼児を親が慌てて手を引っ張ってから,その後自分で腕を上げようとしなくなったときは肘内障を疑う。1~3歳までに多く,病態は輪状靱帯が腕橈関節間に周囲軟部組織と一緒に挟み込まれて嵌頓・固定されることであり,前腕は回内位をとる。治療は前腕を回外位にして肘を屈曲する方法と,前腕を回内する方法があり,保存的に治療される。治療後に腕の挙上が可能となり,難なく治癒することが多いが,親に病態を説明し,安易に手を引っ張らないよう注意して再発を防止する。幼児の肘周囲痛の原因は受傷機転が不明であることも多い。原因が不明な場合は骨折を疑うことも必要である。

    ▶診断のポイント

    受傷機転の聴取が重要である。受傷後の特徴的な肢位は患肢の下垂であり,前腕は回内位となり,動かそうとしない。また,肘から手にかけての痛みも訴える。患側上肢を痛がり自動挙上しなくなったことを訴えて受診した場合,突発的に手を引っ張って発症したのであれば,整復操作を行ってよい。むしろ整復されるときのクリックにより,診断的治療が可能となる。

    転落や転倒の可能性がある場合は,単純X線検査で肘の2方向を撮影する。骨折がわかればその治療を行うが,骨折が見つからない場合は肘関節側面像において,肘頭窩後方から2cm程度近位後方まで透亮像として,脂肪の後方への張り出しがないかを確認する。これはposterior fat pad signと呼ばれ,転位のない関節内骨折があれば,関節内貯留血液が関節包内に緊満して関節包が張り出し,表面の脂肪層が押し出された結果,その透亮像を認めるようになるものである。

    直接的に輪状靱帯の腕頭関節内での嵌頓を調べる場合は,超音波検査が有用である。プローブを肘外側前方に当てると,輪状靱帯に隣接する回外筋が腕頭関節内に少し引き込まれている像が確認できる(J sign)。患側の肘単独で判断することは困難な場合があるが,常に橈骨頭と輪状靱帯,回外筋の形状を健側と患側で対比して判断するとよい。超音波検査では関節水腫の場合は均質な低エコー像を呈するが,血腫の場合はまだらな高エコー像となり,関節内血腫貯留の判定にも有用である。

    きわめて稀ではあるが,もともと軽度の肘関節炎があり,親が手を引っ張ってから強い痛みを訴えることがある。発症が肘内障に似ているが,若年性特発性関節炎小関節炎型の場合はわずかながら屈曲拘縮を呈し,肘内障とは異なる。

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