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悪性骨腫瘍[私の治療]

No.5143 (2022年11月19日発行) P.45

尾﨑敏文 (岡山大学学術研究院医歯薬学域整形外科学教室教授)

登録日: 2022-11-20

最終更新日: 2022-11-16

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  • 原発性悪性骨腫瘍は希少がんに属し,全悪性腫瘍の0.2 %程度である。日本整形外科学会の全国骨腫瘍登録一覧表における,2018年度の原発性悪性骨腫瘍の登録総数は652例で,組織型は骨髄腫,悪性リンパ腫を除くと,多い順に①骨肉腫191例,②軟骨肉腫154例,③ユーイング肉腫46例,④脊索腫33例,⑤悪性線維性組織球腫〔骨未分化高悪性度多形肉腫(undifferentiated pleomorphic sarcoma:UPS)〕24例であった1)
    化学療法は,一般的に骨肉腫,ユーイング肉腫に対して行われる。多くの症例で局所治療として腫瘍切除が必要であり,広範切除術が標準治療である。切除不能症例には粒子線治療が保険収載されている。
    一方,転移性骨腫瘍は原発性悪性骨腫瘍よりはるかに多く発生し,年間10万例以上とされている。特にがんの既往歴がある患者では転移性骨腫瘍の発生に気をつけ,骨折や脊髄麻痺に対する迅速な対応が必要である。

    ▶診断のポイント

    原発性悪性骨腫瘍のうち,骨肉腫やユーイング肉腫は10歳代の小児に好発する。転移性骨腫瘍は50歳代以上,いわゆるがん年齢に好発する。骨肉腫は四肢長管骨骨幹端(特に大腿骨遠位,脛骨近位,上腕骨近位)部に好発する。一方,軟骨肉腫やユーイング肉腫は,四肢の長管骨骨幹部などのほかに,骨盤や肋骨など体幹の骨にも高い比率で発生する。悪性骨腫瘍の四肢発生例では疼痛や腫脹,脊椎発生例では疼痛,脊髄麻痺などの症状を呈する。まずは単純X線検査が重要であり,追加でCTやMRIを行う。

    【検査所見】

    腫瘍の局在診断には単純X線・CT検査,MRI検査が有用である。これらの画像所見は,悪性骨腫瘍と良性腫瘍との鑑別にも参考となる。原発性悪性骨腫瘍の単純X線検査では,骨破壊(地図状パターン,虫食い状パターン,侵食状パターン)や骨硬化像,さらに特徴的な骨膜反応(Codman三角,spicula,sunburst appearance,onion skin appearanceなど)が出現する。転移性骨腫瘍では,骨硬化像は前立腺癌や治療中の乳癌などで認められる。溶骨像は肺癌,腎癌,甲状腺癌などに多い。骨転移の検出には骨シンチグラフィが有用である。MRIは原発腫瘍の進展範囲が把握でき,手術計画を立てるのに必須である。

    血液生化学検査において,骨肉腫では血清アルカリホスファターゼ値が上昇する。また,ユーイング肉腫では炎症反応が上昇することがある。がんの骨転移では,各種がんに特徴的な腫瘍マーカー(たとえば前立腺癌のPSAなど)の上昇が認められる。

    骨・軟部腫瘍の最終的な確定診断は病理組織診断により行う。ユーイング肉腫に関しては,EWSR1-FLI1やEWSR1-ERGなど,染色体転座による腫瘍特異的なキメラ遺伝子が同定されており,補助診断として非常に有用である。

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