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特集:偽痛風とはどのような病気?

No.5105 (2022年02月26日発行) P.18

井尻慎一郎 (井尻整形外科院長)

登録日: 2022-02-25

最終更新日: 2022-02-22

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1982年大阪医科大学卒業。大阪医科大学一般・消化器外科学教室を経て,1984年京都大学医学部整形外科学教室入局。1994年神戸市立医療センター中央市民病院整形外科。2000年より現職。

1 腫脹した関節を診察した場合
60歳以上の高齢者で主に片方の膝関節,手関節,肩関節,肘関節,股関節,足関節の腫脹,疼痛,熱感がある場合,様々な関節炎の原因が考えられるにしても,偽痛風性関節炎(偽痛風)を1つの原因として頭に浮かべておく。
偽痛風は60歳以上の高齢者に多く,急性に関節の腫脹と疼痛を生じる場合が多い。痛風とは異なり高尿酸血症のような原因がはっきりしない病気であり,治療法も確立していない。X線検査で関節軟骨や半月板などに石灰化陰影を認め,偏光顕微鏡で関節液にピロリン酸カルシウム結晶が認められれば診断できる。しかし,X線検査で石灰化陰影がみられない場合や関節液が採取できない場合,採取できてもピロリン酸カルシウム結晶が検出できない場合,過小診断されている可能性が高い。
何よりも急性で濁った関節液がたまった関節炎では常に感染性関節炎との鑑別が重要となる。

2 X線検査で関節に石灰化陰影があったら
肩関節の石灰沈着性腱板炎は夜間に眠れないほどの肩の疼痛を生じることもあり,X線検査では石灰化陰影を認める。この場合,石灰化陰影の原因はリン酸カルシウムである。高齢者の膝関節の半月板に石灰化陰影を認める場合はピロリン酸カルシウム結晶の沈着がほとんどである。

3 関節液が濁っていたら
採取した関節液が濁っている場合,高度な炎症,関節リウマチ,痛風,偽痛風,感染を疑う。急を要しない関節リウマチや痛風との鑑別は困難ではないが,早期の診断と治療を要する感染性関節炎との鑑別は必ずしも容易ではない。

4 感染性関節炎との鑑別が重要
感染性関節炎は診断が遅れると関節の機能障害を生じたり死に至ることもあり,迅速で正確な診断と治療が必要である。採取した関節液が濁っていた場合は,偏光顕微鏡で尿酸結晶やピロリン酸カルシウム結晶の有無の検査,菌塗抹検査と菌培養検査が必須であるが,検査結果が出るまで時間がかかる。関節液に尿酸結晶かピロリン酸カルシウム結晶が検出されれば,痛風性あるいは偽痛風性と鑑別がつき,ひとまず安心ではあるが,感染性関節炎との合併もありうるので,治療は慎重に行う必要がある。

5 治療
現在のところ,偽痛風を直接抑える薬剤や予防する薬剤はない。治療としては,関節炎を生じている関節の安静,凍傷にならない程度に冷却,湿布や塗り薬などの消炎鎮痛外用薬,経口非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の投与がスタンダードである。コルヒチンの投与で効果があるとの文献も欧米には多いが,コルヒチンは日本人には副作用の感受性が高く,また偽痛風は保険適用外であるため使用しにくい。関節穿刺後に長時間作用性ステロイドのトリアムシノロンアセトニド(ケナコルト®)を注入すると関節炎が速やかにおさまることが多い。しかし,感染性関節炎の場合は感染を逆に増悪するので筆者は関節液が濁っている場合はステロイドを注入していない。
再発を繰り返し,NSAIDsによるコントロール不良例には,糖尿病や緑内障がなければ経口プレドニゾロン10mgから開始し漸減している。その後2~24週で再発はおさまることが多い。

1 偽痛風とは

1962年,McCartyにより初めて偽痛風は偽痛風症候群として提唱された1)。最近,偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶沈着症(calcium pyrophosphate deposition:CPPD)の一部とされている。高齢者に突然の関節炎をきたすCPPDの発症機序などはいまだ不明な点が多い。

関節の腫脹と疼痛をきたし,関節穿刺で混濁した液を採取した場合,高度な炎症,関節リウマチ,痛風,偽痛風,感染を疑うが,急を要しない関節リウマチや痛風との鑑別は困難ではない。しかし,早期の診断と治療を要する感染性関節炎との鑑別は必ずしも容易ではない。また,偽痛風の確立した治療法や予防法はなく,高齢者に多く発症するため,薬剤の副作用にも注意を要する。

筆者は自院にて2008年7月~2021年12月までに57症例の偽痛風を経験し,それらの様々な臨床像からいくつかの知見を得て論文にまとめたので,その内容に沿って解説する2)

2 偽痛風の診断基準

偽痛風の診断には,RyanとMcCartyらの診断基準(表1)が広く使われている3)

診断基準ⅠのX線解析や化学分析でのピロリン酸カルシウム(calcium pyrophosphate:CPP)結晶の証明は,臨床上実用的ではなく外来ではほぼ不可能である。

判定については,診断基準Ⅱの偏光顕微鏡で関節液にCPP結晶を確認でき,かつX線で関節軟骨や半月板などに点状・線状の石灰化陰影を認める場合をdefinite,偏光顕微鏡で関節液にCPP結晶を認める場合か,X線で石灰化陰影を認める急性炎症の場合をprobableとしている。

膝関節の場合は関節液がほぼ100%存在し採取も容易なので,関節液中のCPP結晶を偏光顕微鏡で確認することが診断確定に重要である。自験例57症例中48症例が初発時は膝関節の偽痛風で関節液中にCPP結晶を認め,X線検査で石灰化陰影も認めdefiniteであった。

手関節や足関節などは関節液の採取が必ずしも容易でなく,関節液が得られても少量すぎて検鏡してもCPP結晶が検出できず偽陰性となる可能性がありうる。また,膝関節以外ではX線検査で石灰化陰影も見えにくい。膝関節以外ではprobableの場合も偽痛風と診断せざるをえないことが多い。

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