リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は50歳以上の中高年,特に70~80歳に発症頻度が高く,男女比は1:2で女性に多い。頸部,肩,腰部,大腿など四肢近位部の痛みやこわばりを生じる原因不明の炎症性疾患である。グルココルチコイドが奏効して予後良好だが,巨細胞性動脈炎を合併することがある。
比較的急性に後頸部~肩,上腕にかけてと,腰背部~股関節,大腿部にこわばりと痛みを発症する。起床時から午前中に症状が強く左右対称性である。関節痛は肩や股関節などの大関節優位で,全身症状として発熱,全身倦怠感,食欲低下,抑うつ,体重減少がある。
特異的な検査所見はない。赤血球沈降速度の亢進やCRP上昇など炎症反応を認める。リウマトイド因子,抗CCP抗体,抗核抗体といった自己抗体は通常陰性である。
米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会によるPMRの分類基準(ACR/EULAR 2012)が診断に用いられており,50歳以上,両肩の痛み,CRP上昇または赤血球沈降速度の亢進を満たすことが前提条件である。さらに分類基準の各項目がスコア化されており,「朝のこわばりが45分以上持続(2点)」「臀部痛または股関節の可動域制限(1点)」「肩,股関節以外に関節症状なし(1点)」「リウマトイド因子と抗CCP抗体が陰性(2点)」の4項目で6点中4点以上あればPMRに分類する。関節エコー所見がある場合,「少なくとも一方の肩関節に三角筋下滑液包炎および/または上腕二頭筋の腱鞘滑膜炎および/または肩甲上腕の滑膜炎があり,かつ少なくとも一方の股関節に滑膜炎および/または転子部滑液包炎あり(1点)」「両肩の三角筋下滑液包炎,上腕二頭筋腱鞘滑膜炎,肩甲上腕関節滑膜炎のいずれかあり(1点)」を加えて,8点中5点以上でPMRに分類する。この分類基準を用いる場合は感染症,悪性腫瘍,他のリウマチ性疾患などの除外診断も必要である。
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