株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

変形性股関節症[私の治療]

No.5092 (2021年11月27日発行) P.44

菅野伸彦 (大阪大学大学院医学系研究科運動器医工学治療学寄附講座教授)

登録日: 2021-11-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 変形性股関節症は,軟骨の変性摩耗と骨増殖性変化(骨棘や軟骨下骨硬化)と関節包肥厚を特徴とする疾患で,過剰な機械的ストレスに起因する。日本では,股関節形成不全由来の二次性股関節症が多いが,平均寿命の伸びによる超高齢社会で,関節形態に異常のない一次性股関節症が増えている。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    股関節から大腿部にかけての疼痛,可動域制限(拘縮),跛行がみられる。

    【検査所見】

    関節リウマチや他の関節炎では赤血球沈降速度やCRPが上昇するが,股関節症では上昇しない。

    【X線学的評価】

    股関節裂隙の狭小化,大腿骨頭あるいは寛骨臼の骨棘形成,軟骨下骨硬化像や囊腫像がみられる。

    関節症の重症度(病期)は,関節裂隙の軽度狭小化や骨棘形成のみ認める初期,明らかな関節裂隙狭小化と囊腫形成を認める進行期,関節裂隙の消失する末期にわけられる。また,股関節形成不全の診断には,CE角が最も信頼性の高い指標で,20°未満が明らかな形成不全,20°以上25°未満が境界領域とされている。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    症状の緩和と軟骨変性摩耗の進行防止が治療の目標となる。初期には保存治療が行われるが,患者教育,運動療法,物理療法,歩行補助具・装具,薬物療法,関節内注射などが症状緩和に,一時的に有効である。しかし,いずれも長期的に股関節症の進行を防止できるエビデンスに乏しい。青壮年期までの初期股関節症で,明らかな寛骨臼形成不全がある場合は,保存的治療により股関節症が進行してしまわないように,寛骨臼回転骨切り術など有効な関節温存手術を早めに勧めるべきである。

    一方,進行期から末期の股関節症では,骨切り術などの関節温存手術の成績は初期股関節症よりも劣り,中年期の初期股関節症の場合,骨切り術の成績は青壮年期より劣る。青壮年期の進行期以上や中年期の初期股関節症の場合,骨切り術を考慮するのか,より高いQOLを短期間で獲得するために人工股関節全置換術をすべきかの選択となる。

    残り940文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・整形外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療体制の救急告示病院として救急患者を受け入れています。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問診療、訪問看護、訪問介護体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top