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野球肘[私の治療]

No.5057 (2021年03月27日発行) P.43

佐藤和毅 (慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター教授)

登録日: 2021-03-28

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  • 野球肘は,投球動作または投球疑似動作に起因する肘関節障害の総称であり,発症年齢により発育期型と成人型にわけられるが,狭義には成長期型のみを指す。発育期型の大半は骨軟骨障害である。障害部位により,①屈曲回内筋群牽引力や外反ストレスに起因する内側型(上腕骨内側上顆骨端離開・内側上顆下端裂離骨折,肘関節内側側副靱帯損傷など),②上腕骨小頭に対する橈骨頭の反復する圧迫力・剪断力による外側型(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎,橈骨頭骨軟骨障害など),③フォロースルー期の肘関節最大伸展強制と加速期の外反ストレスなどにより発生する後方型(肘頭骨端線離開・疲労骨折など)にわけられる。

    ▶診断のポイント

    【問診】

    病歴,特に初回症状か繰り返しの症状か,またスポーツ歴を詳細に聴取する。投球動作のどのフェーズに肘関節のどの部位が痛むかを確認する。

    【身体所見】

    小頭離断性骨軟骨炎などの関節内病変では,関節の腫脹を認める。内側上顆障害では内側上顆前下方の限局した部位に,小頭離断性骨軟骨炎では小頭や腕橈関節に,肘頭疲労骨折・骨端線損傷では肘頭に圧痛を有する。肘関節可動域制限は初期から認められることが多い。内側型や外側型では,外反ストレステスト(肘関節30°屈曲位)やmoving valgus stress test(外反ストレス下に肘関節を最大屈曲位から伸展)により疼痛が誘発される。後方型は,肘関節最大伸展強制で疼痛が誘発される。

    【画像所見】

    内側上顆障害,小頭離断性骨軟骨炎は,いずれも障害部位が骨端核の40~50°前方(矢状面で4~5時方向)であるため,単純X線での病巣描出には肘関節伸展位正面像よりも45°屈曲位正面像(tangential view)が有用である。内側型では骨端線離開や内側上顆下端の裂離,小頭離断性骨軟骨炎では小頭中央~外側の不整(透亮,分離・遊離像)を認める。肘頭骨端線は13~17歳で閉鎖するが,物理的ストレスが繰り返される投球側は,非投球側よりも早期に閉鎖する。したがって,非投球側骨端線が開存している場合,患側が非投球側よりも開大していれば骨端離開と診断できる。非投球側骨端線が閉鎖している場合,患側が閉鎖していなければ骨端線閉鎖遅延と考えられる。骨端線閉鎖後は疲労骨折が発生する。疲労骨折は単純X線像で描出されないこと,あるいは軽度の骨硬化像として描出されることがしばしばある。

    MRIは,小頭離断性骨軟骨炎や肘頭疲労骨折の初期病変の検出,病期診断に有用である。CTは,単純X線でとらえきれない骨軟骨病変の詳細を描出可能で,治療方針決定に有用である。超音波検査は,非侵襲的に軟骨下骨の異常をとらえ,初期病変の検索も可能である。

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