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(1)整形内科的生活指導・総論─患者を動機づける診療技術[特集:肩こり・腰痛・膝痛患者に対する整形内科的生活指導]

No.4987 (2019年11月23日発行) P.20

小林 只 (弘前大学医学部附属病院総合診療部)

登録日: 2019-11-25

最終更新日: 2019-11-19

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事実の確認方法には,「直接確認(現場を直接見る)」「間接確認(写真や動画で現場を見る)」「第三者から聞く」「本人から聞く」の4種類がある

生活指導の本質は,「生活環境や生活動作の困り事に対する,医療者のサポートと患者自身の工夫」にあり,患者自身が「事実」を受け入れ,能動的に困り事に対峙しようとする心情・態度・行動を尊重することが重要である

1. 生活指導の現状

肩こり・腰痛などの運動器疾患の患者に対する生活指導の方法は,高血圧・糖尿病などの内科疾患の患者に対する生活指導の方法と共有点がある。
「食事に気をつけて!」の言葉のみで行動が変わらない糖尿病患者に対しては,「食事をすべて写真で撮って見せて下さい」のように事実を把握する手法がしばしば実施され,成功する。

これは,運動器疼痛でも同様である。「デスクワークの姿勢に注意!」という漠然とした言葉で,人の行動は変わる(行動変容する)だろうか。適切な生活指導は,正確な現状把握に始まる。

運動器疼痛の治療には,発痛源:source of pain(痛みの原因部位)と,その発痛源による症状を悪化させている悪化因子:complicating factor(身体,心理,生活)の評価が大切である(図1)1)

  

発痛源の適切な評価は,悪化因子を探す手掛かりとなる。一方,悪化因子の明確な同定(患者の思い込みでなければ)は,発痛源の自然軽快を促すことができる。発痛源の詳細な評価・治療は,近年の運動器超音波診療技術の向上も寄与した結果として,加速度的に発展している。しかし,悪化因子に対する評価・介入の技術,または再発予防をめざした取り組みは,現場の「気合い」だけで展開されていることも多く,その手法のノウハウ(例:フレームワーク,全体像)はいまだに提示されていない。したがって,「興味はあるが,取り組む足掛かりが見出せない」という現状がある。

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