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脊髄空洞症の実態と予後は?

No.4974 (2019年08月24日発行) P.56

山元拓哉 (鹿児島赤十字病院第二整形外科部長)

河村一郎 (鹿児島大学医学部整形外科)

登録日: 2019-08-23

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脊髄空洞症(syringomyelia)について,以下をご教示下さい。
(1)学童の健診で脊柱側弯症から発見されるケースが増加していると聞きましたが,その実態と発見後の予後について。
(2)キアリ奇形との関連。
(3)手術療法の適応,術式,成績。

(東京都 M)


【回答】

【自覚症状に乏しく放置されやすい。適切な時期に治療介入できれば予後良好】

脊髄空洞症に伴う側弯症は,神経筋原性側弯症のうち代表的なものと言えます。空洞の原因はキアリ奇形が多く,筆者らの経験した15例中14例(93%)で合併していました。小児の場合,自覚症状を伴わず,特発性側弯症として紹介されることが多くあります。南1)は側弯症のうち脊髄空洞症,キアリ奇形を伴う例はprospective studyでは2.8%で,神経学的異常所見のある例では4.4~26%であり,男女比は1:1.4とほぼ同等で,左凸胸椎カーブ等の特発性と異なる変形の頻度は27%と記載しています。

前述の南1)は,自覚症状として上肢痛・しびれ,片側肢の肥大,転倒しやすい,発汗低下等があり,他覚的には痛覚解離,腹皮反射消失や減弱,下肢腱反射異常のtriasが重要で,26例中10例(38%)に自覚症状を,全例に神経学的異常所見を認めたと述べています。

筆者らの15例(平均観察期間6.6年)の初診時年齢は平均9.6歳で,Cobb角は平均37度でした。9例(60%)が10歳以下であり,特発性側弯症に比べ若年発症が特徴の1つです。自覚症状は片側下肢の違和感を訴えた例と片側の肩関節痛を訴えた例の計2例(13%)のみで認め,下肢腱反射異常も2例(13%)でみられたのみでした。腹皮反射の異常は12例(80%)と高率で,7例は片側が消失,5例は両側とも消失していました。腹皮反射は側弯症診療においては必須と考えます。また,自・他覚所見の異常を有する例や,10歳未満の発症例では早期のMRIによる脊柱管内病変の検索も考慮すべきです。

空洞の経過については,南ら1)は27例中14例の自然縮小,6例の側弯改善を報告しました。側弯が進行する例や空洞の縮小がみられない例では,キアリ奇形に対する大孔減圧術や,空洞とくも膜下腔を連絡するチューブを設置するSSシャント術等を行います。筆者らの15例中11例(73%)に手術を要しました。通常術後に空洞は縮小し,10歳以下では側弯の改善や進行抑制も期待できます。一方,手術や自然経過によりいったん空洞が縮小しても,再拡大する症例も4例経験しており,長期の観察は不可欠です。

側弯については,通常装具療法を行います。45~50度を超えるようであれば,側弯症手術をお勧めします。最終的に9例(60%)で50度以上となり,5例(33%)に側弯症手術を行っております。術式は骨成熟度,側弯の部位,角度,柔らかさ等をみて選択します。後方固定術を施行した3例は,平均で術前68度から術後20度,前方固定術の1例は60度から12度と良好な矯正が得られましたが,術前124度と高度かつ硬い側弯の1例では,前方後方固定術を施行しましたが,術後60度にとどまりました。いずれも神経合併症を含め,明らかな周術期合併症は認めていません。
実際の症例を挙げます(図1)。

14歳,女児。6歳で脊髄空洞症を指摘され,9歳時,A病院脳外科で大孔減圧術施行,側弯進行あり,B整形外科より10歳時当科紹介。34度の側弯を認め,装具療法を開始するも徐々に増悪し,13歳で63度となりました。MRIで空洞(図1c・d,矢印)の再拡大あり,A病院脳外科紹介。シャント術を施行し,空洞は著しく縮小しました。14歳時,側弯症に対し後方矯正固定術を施行し,Cobb角は22度と良好な矯正を得ることができました。

【文献】

1) 日本側彎症学会:側弯症治療の最前線 基礎編. 医薬ジャーナル社, 2013.

【回答者】

山元拓哉 鹿児島赤十字病院第二整形外科部長

河村一郎  鹿児島大学医学部整形外科

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