嚥下障害が疑われる患者に対して、嚥下障害や誤嚥のスクリーニング検査を行うことで、早期介入が可能となり、誤嚥性肺炎のリスクを低減することができる可能性がある。
脳卒中急性期の患者に対してスクリーニング検査を行う場合、嚥下障害や誤嚥の早期発見によって肺炎発症率や死亡率が低減し、入院期間が短縮するといったエビデンスが示されている。脳卒中以外の疾患に関するスクリーニング検査の有用性は、高いエビデンスは示されていない。しかし、臨床現場では、スクリーニング検査が広く実施されている。
スクリーニング検査は、一般的には医師の指示の下、看護師や言語聴覚士が実施するものであり、様々な方法がある。水あるいは食品を嚥下させる検査、指示嚥下の様子や嚥下後の声の変化などを評価する臨床観察、嚥下後の血中酸素飽和度の測定などが用いられている。もっともよく実施されているのは水嚥下テストであり、脳卒中患者のスクリーニング検査における水嚥下テストの有用性に関するシステマティックレビューでは、誤嚥検出の感度と特異度いずれも高いと報告されている。
一方、臨床観察の手法として、欧州ではGugging Swallowing Screen(GUSS)がよく実施されている。このGUSSは、咀嚼機能を含めた摂食嚥下機能をスコア化し、その合計点数に応じて、望ましい食形態を提案することができる優れたスクリーニング検査である。間接評価からステップワイズ形式で、半固体、液体、固体の検査食へと徐々に難易度の高いものに進み、問題なく嚥下が可能であれば点数が加算されていく検査である。
ただし、GUSSでは、検査食としてプリン状の食品やビスケットを用いており、米飯を主食とする日本人の嗜好にはマッチしない。このGUSSをベースにして、厚生労働科学研究費補助金採択の共同研究が行われ、有意義な成果が得られた。今後、日本人向けのよりよいスクリーニング検査が開発されるであろう。
唐帆健浩(じんだい耳鼻咽喉科院長)[耳鼻咽喉科][摂食嚥下障害]