検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

【識者の眼】「医療機関とパワハラ」浅川敬太

登録日: 2025.06.18 最終更新日: 2026.02.21

浅川敬太 (梅田総合法律事務所弁護士、医師)

お気に入りに登録する

規模の大小を問わず、医療機関から「パワハラ研修」を依頼される機会が増えてきました。パワハラをなくしたい、パワハラを生むような土壌をつくりたくない、と考える病院が増えてきたことは、とても好ましいことだと思います。

病院は、ほかの業種に比べて、パワハラが発生しやすいと言われています。病院の業務において、医師の裁量権・決定権が大きいことがその一因です。医師とそのほかの職種との間には、優越的な関係が形成されやすいと言われています。専門的な知見・経験を持つ人の意見は通りやすく、不適切な言動が含まれていても、制御されにくいという点が挙げられます。卒後医学教育は厳しいものだという価値観が、管理職を中心に色濃く残存しているという側面もないわけではありません。

また、一般社会では常識となっていることが、病院には一周遅れで入ってくることも多いように感じます。2020年に「改正労働施策総合推進法」(いわゆるパワハラ防止法)が施行された際、一般企業はこぞってパワハラ研修を実施しました。ところが、病院からパワハラ研修の依頼をされはじめたのは、2〜3年が経過してからだったと記憶しています。筆者の肌感覚・雑感で恐縮ですが、当時、法律が施行されることで、パワハラ研修を慌てて実施した病院は、稀有だったように思います。

さらに、病院は、ほかの業種に比べて、パワハラ問題が顕在化する割合が低いとも言われています。これは、従業員の多くが有資格者であり、転職が比較的容易であることが関係しています。つまり、パワハラの被害者は、早々に見切りをつけて離れていくということです。一般企業では、なかなかそういうわけにはいかないでしょう。パワハラ問題があるのに、声を上げることなく当事者が立ち去るケースが多いため、問題が顕在化しない。組織において自浄作用がなくなることの危険性は、よく知られているところです。

パワハラは、業務上の正当かつ必要な指導との境界線が必ずしもクリアではなく、そのわかりにくさに対してフラストレーションを感じる先生方がおられるのは理解します。しかし、ほかの業種に比べても、パワハラが発生しやすく、そして、気づかれにくいのが、我々が身をおく医療の世界です。このことだけでも胸にとどめておいたら、パワハラが見えてくることが増えるのではないかと思います。

疑わないと見えてこない……。さながら、鑑別診断を進めながら行う身体検査のようです。想像力を働かせて、声なき声を聞くというのは、まさに我々医師が得意とするところではないでしょうか。

浅川敬太(梅田総合法律事務所弁護士、医師)[パワハラ][パワハラ防止法

ご意見・ご感想はこちらより


1