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自閉症スペクトラム障害(ASD)と発達障害診療の現状 【専門医の育成および地域の小児科医と専門医との連携が必要】

No.4805 (2016年05月28日発行) P.55

中西真理子 (大阪大学小児科)

大薗恵一 (大阪大学小児科教授)

登録日: 2016-05-28

最終更新日: 2016-10-26

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かつて自閉症は稀な重い障害と考えられていたが,近年は典型的な自閉症でなくても,その特性により社会生活に困難を抱える者も含められるようになった。意思伝達が可能で知的障害のない比較的軽度の障害から,典型的な自閉症までを幅広く含めて広汎性発達障害と呼び,自閉症やアスペルガー障害などの下位分類が設けられたが,線引きにあいまいな点が多く,混乱をまねいていた。
2013年に米国精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル」の最新版DSM-5が出版された際,広汎性発達障害とその下位分類が廃止され,1つの概念として「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)」にまとめられた。米国では14年,68人に1人がASDという調査結果が発表された(文献1)。罹患率は調査のたびに上昇しているが,最大の原因は診断基準の変化にあると考えられている(文献2)。この傾向は日本においても同じである。ASDを含め発達障害診療のニーズは増加の一途であるが,専門機関では数カ月以上の初診待機や,十分な再診枠が確保できないなどの問題を抱えている。
今後は発達障害診療の専門医を増やすことが急務であると同時に,地域の小児科医が専門医と連携して発達障害診療に関わる必要がある。医療機関と保健福祉,療育施設が連携し,地域で障害を持つ子どもや,その家族を支援する必要がある。

【文献】


1) Baio J, et al:MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2014;63(SS02):1-21.
2) Hansen SN, et al:JAMA Pediatr. 2015;169(1):56-62.

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