腰痛が急性なのか慢性なのか,また,下肢症状を呈しているか否かでわけて考える。
カロナールⓇ(アセトアミノフェン)や,ロキソニンⓇ(ロキソプロフェンナトリウム水和物),ボルタレンⓇ(ジクロフェナクナトリウム),セレコックスⓇ(セレコキシブ)などの非ステロイド性抗炎症薬が第一選択となる。高齢者の場合は,非ステロイド性抗炎症薬処方による腎機能障害と胃腸障害の可能性には十分に留意し,長期投与はなるべく控える。
上記の薬剤のほかに,トラマドール製剤〔トラマールⓇ(トラマドール塩酸塩)〕などの弱オピオイド,ノイロトロピンなどのワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液,サインバルタⓇ(デュロキセチン塩酸塩)などのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬を適宜組み合わせて処方する。
プロレナールⓇ(リマプロスト アルファデクス)のほかに,リリカⓇ(プレガバリン)やタリージェⓇ(ミロガバリンベシル酸塩)などのカルシウムチャネルα2δ遮断薬を処方する。これらの薬剤に対しても抵抗性の場合は,注射療法や手術療法も考慮し,専門医に紹介する。
腰椎変性すべり症の発症頻度は決して低いわけではなく,特に腰痛を訴える中年以降の女性ではしばしば認められるものであり,腰椎変性すべり症自体が重篤な機能障害を引き起こすものではないことを説明する。一方で,腰部脊柱管狭窄症の症状として下肢症状などを呈している場合は,腰椎単純MRIなどで脊柱管狭窄の有無などを確認することを勧める。また,それらの症状を伴う場合には,やみくもに疼痛を我慢することはしないように指導する。
【参考資料】
▶日本整形外科学会, 他, 監:腰痛診療ガイドライン2019. 改訂第2版. 南江堂, 2019.
▶日本整形外科学会, 他, 監:腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021. 改訂第2版. 南江堂, 2021.
藤田順之(藤田医科大学整形外科教授)