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【識者の眼】「AYAがん患者のペイシェント・ジャーニーを支える」天野慎介

No.5104 (2022年02月19日発行) P.61

天野慎介 (一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長)

登録日: 2022-02-04

最終更新日: 2022-02-03

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2018年3月に閣議決定された国の第3期がん対策推進基本計画では、AYA(思春期・若年成人)世代のがん対策が重点政策のひとつとして取り上げられた。私自身も2000年、27歳のときに悪性リンパ腫を発症し、薬物療法、放射線療法、自家末梢血幹細胞移植などの治療を受け、2回の再発も経験したAYA世代のがん患者である。

私が治療を受けていた頃は、後にがん治療を変えることになる分子標的薬や免疫チェックポイント薬などはなく、私が治療を受けた血液内科は全告知だったが、がん告知をしていない診療科もあった。病棟は中高年のがん患者さんが多く、とにかく孤独だった。

友人たちはよく見舞いに来てくれたし、私のことを心配し、励ましてくれたが、仕事や恋愛、結婚や出産など、人生のいわば成長過程にある友人たちと比べ、死に向かって歩んでいるかもしれない自分と比べると、「こちら側とあちら側」の大きな隔たりを感じずにはいられなかった。

私が1回目の再発治療を受ける頃、米国での承認から4年を経て、リツキシマブが国内承認された。同薬によりリンパ腫の治療成績は大きく向上し、その後に登場してきた新規治療薬によって、より多くの患者に長期生存が期待できるようになった。私もその恩恵を受けた患者の一人と言えるかもしれないが、恩恵を受ける前に旅立たれた同世代の患者さんも多かった。

AYA世代のがん患者は、人生の成長過程で発症することから、がんを発症し、治療を受け、治療を終えてから経過観察や社会復帰、あるいは再発や病状の進行、いわゆる終末期や看取りを経験するという一連の「ペイシェント・ジャーニー(patient journey)」を進んでいく中で、成人のがんとは異なる多様な課題に直面することが指摘されている。

こういったAYA世代のがん領域の学術活動、教育活動、社会啓発および人材育成等を行うことにより、思春期・若年成人がん領域における医療と支援の向上に寄与することを目的として、2018年に一般社団法人AYAがんの医療と支援のあり方研究会が設立された。その第4回学術集会が、本年3月20〜21日にパシフィコ横浜で開催され、私が学術集会会長を務める。

学術集会のテーマは「AYAがん患者のペイシェント・ジャーニーを支える」である。私ががんを発症した20年前、羅針盤はまったくなく、自分がこれからどこに進んでいくのか、大きな不安を抱えていた。学術集会を通じて、一人でも多くのAYA世代のがん患者に羅針盤を提供していきたいと願う。

天野慎介(一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長)[AYA世代がん患者]

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