山口育子 (認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)
登録日: 2025-05-23
最終更新日: 2025-05-21
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(以下、COML)では、1990年に活動をスタートして以来、患者・市民を対象に様々なセミナーや講座を行ってきました。その中でも「将来的に、政策提言を含め、医療における場面で、患者・市民参画が求められるようになる。そうであれば、医療における制度・しくみ、課題などを理解し、冷静かつ客観的に意見を述べる患者・市民を増やす必要がある」と考え、2009年から始めたのが「医療をささえる市民養成講座」です。
この講座は1回3時間の全5回で、講座1「医療現場で活躍できる市民参加活動」では、患者・市民が活躍できる活動を紹介しています。講座2「医療の基本」では、医療の歴史的変遷、医療機関や専門職の種類と役割、医療現場の課題を伝えます。講座3「医療相談の実際」では、COMLの相談対応の基本姿勢と実際、患者の意識の変遷、相談対応に必要な情報と姿勢、具体的な相談内容などを伝えます。講座4「医療を知るⅠ」では、病院選びと賢い患者の心構え、セカンドオピニオン、医療費の知識といった内容で、患者が知っておきたい診療報酬点数にもふみ込みます。そして講座5「医療を知るⅡ」では、納得できないときの解決方法や個人情報保護法、成年後見制度、高額療養費制度などの医療にまつわる社会的な知識、さらには治験・臨床試験やジェネリック、医薬分業、副作用被害救済制度など薬にまつわる情報提供も行っています。
2009年は大きな反響があり、参加者も120名を超え、「医療には以前から関心があって学びたかった」という人たちが熱意を持って参加してくれました。動機を尋ねると、「患者や家族として医療でお世話になった恩返しがしたい」「閉鎖的な医療界に風穴をあけたい」など様々でした。参加者が学びを深めていくうちに「もっと学びたい」という意欲を高め、医療への理解が高まると不安や不信から「私はどうすればよいか」と意識が変化することを実感したのです。
ただ、このように医療に関心を持って、参加費を支払い、休みの時間を割いてでも学ぼうとする人は、やはり一握りです。年を追うごとに参加者が減り、さらにインターネットやChatGPTの登場で拍車がかかっています。
しかし、医療の問題は誰にとっても大切なことです。病気になる前から受診の仕方や基本的な知識、制度を理解しておくことは重要なため、COMLでは現在、医療に関する基本的なe-ラーニング(1本20分前後で基本編10本、応用編6本)を準備しています。企業の福利厚生や、個人で学ぶことができ、多くの人の元に届くよう努力していくつもりです。
山口育子(認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)[e-ラーニング][養成講座]