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【識者の眼】「非感染性・慢性疾患の疫学者が語る『オミクロン株に対する世界と日本の現状と対応』」鈴木貞夫

No.5104 (2022年02月19日発行) P.54

鈴木貞夫 (名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)

登録日: 2022-02-02

最終更新日: 2022-02-03

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新型コロナ新規感染者数は、過去最高を日々更新しているが、1月末時点での実効再生産数は1.6程度で、下降傾向は堅調である。このまま推移して、2月上旬にピークを迎えた後、収束に向かってもらいたい。

年末年始をはさんだ1カ月の間に、新型コロナを取り巻く世界の状況は大きく変化した。かつて、人口100万人比で新規感染者が1000を超えたら大流行と考えられていたのが、欧州諸国が次々と数千のオーダーに乗せ、イスラエルでは1万超えが観察された1)。新規感染者が1を切っていた日本でもこの期間に100を超え、現在500台でなお増加中である。何であれ、1カ月で100倍以上になったことに対して、それまでと同じ対応が取れることはない。医療は「自宅待機」、検査は「みなし陽性」が許容されている。

都道府県別では、感染が先行した沖縄県では減少が始まっており、山口、広島両県でもピークを迎えつつある。現在の日本で、対人口で新規感染者が多い順に、東京都、大阪府、京都府、兵庫県、沖縄県、神奈川県、愛知県と、沖縄県以外はすべて大都市を持ち、いずれも直線的に増加している2)。オミクロン株は感染力が強い。そのため、以前より高リスク行動の影響が減少し、ウイルスが広がる余地のある人口規模と密度の影響が上昇しているように思われる。東京都は既に沖縄県のピーク値を超え、大阪府も沖縄超えは時間の問題だ。ピーク値を少しでも低い値に留めることが最重要課題と言える。

新規感染が毎日更新される中、死亡はピーク(2021年2月)の4割に達しておらず、致死率は大きく低下している。これは日本だけの現象ではなく、オミクロン流行で週平均ベースの死亡数を更新させた国はない。そうした影響か、欧州では、コロナ規制を緩和する動きが広がっている。感染ピークを過ぎたイギリスやフランスだけでなく、世界有数の流行国デンマークでも、2月からすべての国内規制を撤廃する。オミクロン株に感染しても、重症化しにくいとの判断からだ。

金融テクノロジー企業のブルームバーグが、毎月発表している「Covid Resilience Rank-ing」3)も、従来のコロナ指標重視から、国の再開に向けての指標重視にかじを切った。日本は53カ国中15位で、イギリスやスペインより下位である。アジア諸国は渡航制限が多く、評価は厳しめだ。規制緩和中の欧州諸国は、毎日のコロナ死亡が対人口で日本の10倍以上あるのだが、コロナ感染や死亡をどこまで許容するのかという意識のレベルで、国により大きい隔たりがある。

【文献】

1)Our World in Data「country profiles」.

   https://ourworldindata.org/coronavirus#coronavirus-country-profiles

2)NHK特設サイト:新型コロナウイルス、都道府県別の感染者数.

   https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/ 

3)Bloomberg「The Covid Resilience Ranking」.

   https://www.bloomberg.com/graphics/covid-resilience-ranking/?fbclid=IwAR0xtfpem24Wzp5hILRJVg8v8t1RNafCJeA0A-R_ISjFLWPzRtcHUC1RWSc

鈴木貞夫(名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)[新型コロナウイルス感染症]

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