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特集:脆弱性骨折患者に対する二次骨折予防─「再骨折予防手帳」の使い方

No.5061 (2021年04月24日発行) P.18

山本智章 (新潟リハビリテーション病院院長)

登録日: 2021-04-23

最終更新日: 2021-04-21

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1985年新潟大学医学部卒業,同年新潟大学整形外科入局。92~94年米国ユタ大学留学、2009年新潟リハビリテーション病院院長。日本骨粗鬆症学会理事。日本脆弱性骨折ネットワーク理事。骨折や骨粗鬆症を専門にしている。

1 二次骨折予防と骨折リエゾンサービス(FLS)

①二次骨折予防とは

・脆弱性骨折は,大きな治療コストを要するとともに要介護の主要原因であり,その代表的疾患である大腿骨近位部骨折は,日本において年間約20万人の発生がある。
・骨折した高齢者は次の骨折リスクが高いにもかかわらず,骨折後に骨密度検査や骨粗鬆症治療が開始されず,また治療継続率がきわめて低いため,容易に二次骨折が発生して,ADLおよびQOL低下がさらに進行する。
・二次骨折予防の重要性が認識され,その解決方法として,骨折リエゾンサービス(FLS)が世界各国に広がった。

②骨折リエゾンサービス(FLS)
・FLSは,多職種,多診療科での包括的な取り組みによる二次骨折予防のためのプログラムである。
・FLS担当看護師が中心となって,骨折患者の特定から評価,薬剤治療,転倒予防,退院後のフォローまで,二次骨折予防のための介入を実施する。
・FLSの導入は,骨密度検査(DXA)実施率,薬剤治療開始率,継続率が増加して,その結果,二次骨折率の低下と生命予後の改善を得られることが示されている。

③再骨折予防手帳とは
・二次骨折予防策として,新潟リハビリテーション病院では,2013年に大腿骨近位部骨折患者に対するFLSを導入する際に再骨折予防手帳を作成した。
・本手帳は二次骨折予防のための情報を網羅して記載し,患者への教育資材として活用する。
・手帳は骨粗鬆症マネージャーによって管理され,入院中の骨粗鬆症の検査や治療が欠落しないようにモニタリングされる。
・多職種が専門的な視点から二次骨折予防のための個別的指導を実施し,本手帳を用いてその情報を共有する。
・2019年,運動器の健康・日本協会から二次骨折予防手帖保存版が発刊されて,入手可能である。

2 二次骨折予防における病診連携:かかりつけ医の役割
・骨粗鬆症は無症状で進行し,高齢者の多くは骨折を受傷して初めて骨粗鬆症であることを認識する。骨折は次の骨折発症の警鐘事象である。
・脆弱性骨折患者は様々な併存疾患を有していることが多く,通常はかかりつけ医での医学的管理が行われている。退院後はかかりつけ医による骨粗鬆症診療継続のための,地域での骨密度検査体制が不可欠である。
・新潟市医師会骨粗鬆症連携委員会では,DXAを保有する医療機関の情報をホームページに公開した。また,新潟県骨粗鬆症サポーター制度は高齢者医療,介護に関わるスタッフを対象にした骨粗鬆症研修会であり,骨粗鬆症教育と交流の場として貢献している。

3 日本におけるリエゾンサービス
・2006年から導入された大腿骨近位部骨折患者地域連携パスでは,骨折後の二次骨折予防は十分実施されていなかった。
・日本骨粗鬆症学会は,2014年に骨粗鬆症リエゾンサービス「Osteoporosis Liaison Service(OLS)」を提唱し,骨粗鬆症マネージャー認定制度が開始された。
・OLSは,骨粗鬆症全体の予防および骨折の一次予防から二次予防を含めたリエゾンサービスを目指した概念とされている。
・日本脆弱性骨折ネットワークと日本骨粗鬆症学会が,2019年にFLSクリニカルスタンダードを公開した。
・世界的には,国際骨粗鬆症財団(IOF)が,2012年に二次骨折予防の対策として「Capture the Fracture」を提唱し,FLSの普及のためのウェブサイトを立ち上げた。
・IOFでは,二次骨折予防の13項目評価による医療機関の認証制度があり,日本においては,2020年12月現在で35施設が認証を受けている。

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