(秋田県 S)
【足底全面が均等に接地できることを目標に,足底側からプレートで強固に固定する】
足部の開放骨折では,(1)開放創と軟部組織損傷の評価,(2)骨折型の評価,(3)社会的背景をもとに,治療のゴールを設定するのがよいでしょう。どのようにして受傷したのか,履いていた靴は何か,地面は土か舗装路かなどを確認することは,受傷時に足部が受けたエネルギーを推測するのに有益です。
Gustilo分類1)が役に立ちます。初期診療(first touch)では,創部感染を防止する十分なデブリードマンと洗浄が必須です。創部感染が起こると治療のゴール設定は極端に低くしなければならなくなります。伝達麻酔や駆血帯を用いて十分な汚染の確認を行います。特に足の外傷では,足底筋が挫滅やコンパートメント症候群を起こしやすく,コンパートメント圧の上昇が心配される場合は,足部内外側の減張切開が必要です。タイヤで轢かれた外傷では,皮膚が皮下組織から広範に剝がれるデグロービング損傷となっていることが多く,裂創を完全に縫合すると広範な皮膚壊死を起こします。私は,数箇所だけ緩く創縁を近づけるだけにして,皮下の露出部は人工真皮などで覆います。
幸い本症例では創部感染は起きていませんが,滲出液の状態や創部の色調によっては24~48時間後に再洗浄(second look)を行います。
骨折型は受傷部位の不安定性を知るのに有用で,AO/OTA分類2)を用いて評価します。正面X線写真のほかに,斜位のX線写真が必要です。中足骨骨折では,しばしばリスフラン関節や中足趾関節の脱臼や亜脱臼を合併するため,麻酔下でストレスを加えてみるのは診断に役立ちます。初期治療の際には,骨折部に一時的安定性を得るため,中足骨では1.2~1.6mmのK-wireで仮止めしておくと外固定をしないですむでしょう。最終的整復固定術では,足底全面が均等に接地できる(plantigrade)ように,足の縦のアーチと横のアーチを再現できるように整復します(図2)。反対側のX線写真や,3次元CTはきわめて有用です。中足骨が粉砕して長さを保てないような場合は,創外固定も役に立つでしょう。
本症例は感染していませんので,このままでも骨癒合は得られるでしょうが,外反母趾のように中足趾関節が亜脱臼し,中足骨遠位骨片が転位して外転していますので,正確な整復を試み,足底側からプレートで強固に固定したいところです。
患者の置かれている状況の把握は,ゴール設定に欠かせません。家族構成や,労災の有無,農業者ではこれから農繁期なのか農閑期なのか,代わりに農業をしてくれる後継者はいるのかなどを知っておくことは,就労までの時間的余裕と,経済的負担を考慮する上で重要です。
本症例は80歳ですから,長期の非荷重指示は困難であり,早期荷重リハビリに耐えられる固定術が必要でしょう。
【文献】
1) Gustilo RB, et al:J Bone Joint Surg Am. 1976; 58(4):453-8.
2) Kellam JF, et al:J Orthop Trauma. 2018;32 (Suppl 1):S1-S10.
【回答者】
大関 覚 獨協医科大学埼玉医療センター整形外科主任教授