【自家腫瘍処理骨を用いた再建法】
悪性骨腫瘍の切除後再建材料としては,腫瘍用人工関節が用いられることが多く,早期からの患肢機能回復に有用である。しかし,長期的には人工材料自体の耐久性が問題となり,人工関節の緩みや破損のために再置換術を余儀なくされることも多いため,活動性が高い若年者などでは,運動などの日常生活動作が制限されることが一般的である。そのため,自己組織で再建を行うbiological reconstruction(生物学的再建)が提唱され,同種骨,自家移植骨,延長仮骨,自家腫瘍処理骨などを用いた,様々な再建法が行われている。
このうち自家腫瘍処理骨を用いた再建は,宗教的死生観のため同種骨を入手することが困難なわが国において,より積極的に用いられている方法である。この再建法では,処理骨自体がもともと自分の骨であり,最良の形態的適合性があること,人工関節と比べ靱帯などの軟部組織の再縫合が容易であること,などの利点がある。
自家腫瘍骨の処理法には,オートクレーブ処理,放射線処理,加温(パスツール)処理,液体窒素処理などがある。特に液体窒素処理法は,費用も安価であり,骨形成,骨誘導,免疫反応などに重要な蛋白質を温存可能な処理法として,近年では海外でも注目されている1)2)。
【文献】
1) Tsuchiya H, et al:J Bone Joint Surg Br. 2005; 87(2):218-25.
2) Tsuchiya H, et al:J Orthop Sci. 2010;15(3): 340-9.
【解説】
土屋弘行 金沢大学整形外科教授