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CRPSの発症機序 器質面・心理社会的面からメカニズムを考える [学術論文]

No.4697 (2014年05月03日発行) P.40

牛田享宏 (愛知医科大学学際的痛みセンター,運動療育センター)

池本竜則  (愛知医科大学学際的痛みセンター,運動療育センター)

畠山 登 (愛知医科大学学際的痛みセンター,運動療育センター)

新井健一 (愛知医科大学学際的痛みセンター,運動療育センター)

西原真理 (愛知医科大学学際的痛みセンター,運動療育センター)

井上真輔 (愛知医科大学学際的痛みセンター,運動療育センター)

河合隆志 (愛知医科大学学際的痛みセンター,運動療育センター)

佐藤 純 (愛知医科大学学際的痛みセンター,運動療育センター)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-05

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  • 複合性局所疼痛症候群(CRPS)の症状としては外傷後の通常の治癒経過と異なる感覚異常,自律神経系関連症状,運動系の異常,皮膚などの萎縮性の変化などがある。これらは,微細な外傷後ないしは受傷機転から判断してきわめて不釣り合いな機能障害を呈することが多い。痛みの発生や維持には,末梢の機能不全などに伴う神経生理学的問題と心理社会的面まで関与した記憶と情動による苦痛が大きく影響していると考えられる。

    1. これまでの経緯

    交通事故や外傷の後,非常に強い疼痛を引き起こす複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)が患者のADL,QOLを低下させることから,近年その疾患概念に注目が及んできている。この病態を理解するにあたっては,これまでの経緯をふまえた疾患概念を理解する必要がある。
    南北戦争(1861〜1865年)の軍医であったMitchell(米国の内科医)は,末梢神経を損傷した11人の傷病兵が耐え難い痛みに苦しんでいるのを見て,カウザルギー〔kausos(熱)とalgos(痛み)から由来〕と名づけた。その後,Leriche(フランスの外科医)は,神経を損傷した兵士の疼痛に対して,その原因は交感神経の過剰活動によるものと考え,動脈周囲の末梢交感神経遮断(periarterial sympathectomy)を行い,これを推奨した。一方,Sudeck(ドイツ・ハンブルクの外科学教授)は1900年に関節,特に手関節や足関節の捻挫,またはそのほかの軽度な外傷の後で現れる骨の斑点状骨塩脱落と,軟組織の痛みを伴う萎縮(Sudeck骨萎縮または外傷後骨粗鬆症)を確認し,大きな末梢神経の損傷がないのに起こるカウザルギー様疾患と考えた(図1)。
    Evans(米国・ボストンの内科医)は,1946年にSudeck骨萎縮および類似の病態について発赤・腫脹・発汗異常・萎縮などの交感神経の関与が大きいと考え,反射性交感神経性ジストロフィー(reflex sympathetic dystrophy;RSD)と名づけた。1980年代中頃まではRSDは交感神経の過興奮で生じる症候群と理解されていた。その後,Roberts(米国の医師)は1986年,RSDに対して自律神経系の薬やブロックが奏効するものとそうでないものがあることを報告し,疼痛が改善するものを交感神経依存性疼痛,効果がないか症状が増強するものを交感神経非依存性疼痛とした。
    1994年,国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)は慢性疼痛の分類で,名称に“sympathetic”という用語を含まないCRPSという新しい名称を作って,RSDとカウザルギーをCRPSにまとめ,RSDをCRPS type Ⅰ,カウザルギーをCRPS type Ⅱとした。しかし,CRPSとして症状をまとめることはできないので,今なお,RSDやカウザルギーという用語も使われている。

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