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柔道整復療養費の不正請求問題 ─厚労省委員会が対策を公表 【まとめてみました】

No.4834 (2016年12月17日発行) P.16

登録日: 2016-12-12

最終更新日: 2016-12-09

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  • 柔道整復療養費における不正請求の存在は以前より指摘されてきた問題だ。肩こりを捻挫などと偽って保険請求する手口のほか、昨年11月には、架空の施術記録を作成して暴力団が療養費を1億円以上不正受給する詐欺事件が発生。こうした問題を受け、今年3月から厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会(座長=遠藤久夫学習院大経済学部教授)が不正請求対策の議論を開始し、9月に対策を取りまとめた。

    これらの対策について紹介する前に、まずは柔道整復療養費の概要について触れたい。

    増える柔道整復師、療養費は4000億で横ばい

    柔道整復療養費の支給対象(表1)は、「急性または亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれ等」の回復を図る施術。


    柔道整復師の就業人数は約6万4000人(2014年)。国は需給調整を理由に1973年以降、養成校の新規指定を行っていなかったが、98年に福岡地裁が「指定基準が充たされる以上は指定を行わなければならない」と判断して以降、養成校が増加。それに伴い、柔道整復師も増加している(図1)。

    療養費は本来、患者が費用の全額を支払った後に自己負担分以外を保険者に請求して支給を受ける「償還払い」が原則だが、柔道整復療養費は医療費のように患者が自己負担分相当額を施術者に支払い、施術者が療養費を保険者に請求する「受領委任形式」が1936年から例外的に認められている。

    年間の柔道整復療養費は約4000億円(表2)で、国の医療費の1%に当たる。小児科診療所の医療費(約3500億円)を上回る金額だ。疾病内訳は捻挫と打撲が99%を占める。今年10月に柔道整復療養費の改定が行われ、0.28%のプラス改定となった。

    「部位転がし」対策で統一審査基準

    厚労省委員会がまとめた不正請求対策(表3)では、同一患者で負傷と治癒を繰り返す新たな手口「部位転がし」への対応を強化。現状では、審査基準にグレーゾーンが多いとの指摘があるため、支給申請書を審査する「柔整審査会」における統一的な審査基準を策定。審査会の調査権限も強化する。

    また、適正な保険請求を促すため、柔道整復療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件を追加。現状は柔道整復師の資格のみが要件だが、研修受講や実務経験を要件に加えることを検討するとした。

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