石破茂内閣は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(以下、「骨太方針2025」)を閣議決定しました。本稿では、「骨太方針2025」及びそれと同時に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」(以下、「グランドデザイン2025」)に書かれている医療・社会保障改革方針を、昨年の「骨太方針2024」や5月27日公表の財務省・財政制度等審議会「建議」との記述の異同に注意しつつ、複眼的に検討します。
「骨太方針2025」の医療・社会保障改革方針でもっとも注目すべきことは、言うまでもなく、長年続けられてきた、厳しい医療・社会保障費抑制の見直しが、以下のように明記されたことです。「医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある」。医療費等の「高齢化による増加分に相当する伸びに…経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」「社会保障関係費の伸びの要因として高齢化と高度化等が存在する」(すべて第3章38頁)。
医療分野等の「賃上げ」は「骨太方針2024」にも書かれていましたが、「経営の安定」が書かれたのは初めてで、この表現が3回も使われています。社会保障関係費の伸びの要因として、「(医療の)高度化」が公式に認められたのも初めてです。