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腰痛と末梢神経障害 【保存的治療抵抗性の場合は局所麻酔下の神経剝離術が有用】

No.4805 (2016年05月28日発行) P.54

森本大二郎 (日本医科大学脳神経外)

森田明夫 (日本医科大学脳神経外科主任教授)

登録日: 2016-05-28

最終更新日: 2021-01-06

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腰痛の原因は多岐にわたり,種々の腰椎周辺疾患は,画像診断が困難なために非特異的腰痛として扱われ,診断されずに適切な治療が行われていない場合が散見される。特に最近注目されている上殿皮神経障害に関して解説する。
殿部の感覚を支配する上殿皮神経(T11~L4後根神経に由来)が, 腸骨稜上縁の胸腰筋膜貫通部にて絞扼され体動で牽引され腰痛を起こす。全腰痛の1.6~14%と報告されている(文献1,2)。正中から7~8cm外側の腸骨稜上の障害部位に一致し圧痛が存在する。腰殿部痛に,時に下肢に放散する痛みを伴う。腰痛は寝返りや起き上がり・立ち上がり動作などの体動時,腰部伸展や屈曲の持続で誘発・増悪する傾向がある。歩行で腰痛が誘発・増悪する間欠性跛行を呈することがあり,腰椎疾患との鑑別を要する。ほかの腰痛性疾患に合併し,本症が腰痛の原因の主体となっている場合がある。
画像診断は困難で,臨床症状,理学所見,上殿皮神経ブロックの鎮痛効果により診断を行う。各種鎮痛薬およびブロックによる保存的治療に抵抗する場合には,局所麻酔下の神経剥離術が有用である。筆者らは,34例55側に対し,局所麻酔下に顕微鏡を用いた神経剝離術による良好な治療成績を報告した(文献3)。本疾患は治療可能な腰痛性疾患のひとつで,腰痛診療に際し本疾患を念頭に置くことが望まれる。

【文献】


1) Maigne JY, et al:Spine (Phila Pa 1976). 1997;22(10):1156-9.
2) Kuniya H, et al:J Orthop Surg Res. 2014;9:139.
3) Morimoto D, et al:J Neurosurg Spine. 2013;19(1):71-5.

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