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股関節鏡下手術 【良好な除痛効果が報告されているが,寛骨臼形成不全では慎重に】

No.4791 (2016年02月20日発行) P.53

加谷光規 (札幌医科大学整形外科講師)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2016-10-26

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大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)による股関節唇損傷や関節軟骨損傷に対する低侵襲手術として,股関節鏡下手術が注目されている。FAIは2003年にGanzらにより提唱された疾患概念で,寛骨臼縁と大腿骨頭が衝突することにより,関節唇や関節軟骨に損傷を生じ,結果として股関節の機能障害を引き起こす病態である。アスリートの鼠径部痛の原因となったり,変形性股関節症の前駆病変であるとも推測されている。わが国においては2015年に日本股関節学会よりFAI診断指針が示された。症状の特徴は鼠径部痛で,(1)歩行時,(2)椅子から立ち上がる際,(3)車の乗り降りの際,に疼痛を自覚する。
薬物療法や運動療法で効果を認めない場合に手術を行うことが多い。股関節鏡下手術では,2~3箇所(各約1cm)の切開で手術を行うため,中殿筋をはじめとする股関節周囲筋にほとんど侵襲を加えない。鏡視下にPincer病変や下前腸骨棘を削り,Cam変形の矯正を行うことで寛骨臼と大腿骨頭間の衝突を解消する。損傷した関節唇の修復を行うこともある。現在まで,多くの施設から良好な除痛効果と高いスポーツ競技復帰率が報告されている。合併症としては,術後の関節包の癒着による疼痛,一過性の外側大腿皮神経や陰部神経の傷害が報告されている。
わが国は股関節疾患において寛骨臼形成不全の占める割合が高い。寛骨臼形成不全も股関節唇損傷を引き起こすことが多く,股関節鏡下手術による股関節唇の修復が試みられたが,術後も疼痛が残存したり関節症を進行させることも多いため,寛骨臼形成不全患者に対する股関節鏡下手術の施行には慎重になるべきであると考えられている。

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