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手指の外傷に対する超音波診療

No.4767 (2015年09月05日発行) P.62

中島祐子 (広島大学病院整形外科診療講師)

登録日: 2015-09-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

超音波診断機器の画質が向上し,運動器エコーは,整形外科診療に必須になっています。そこで,私たちが日常診療でよく遭遇する手指の外傷をエコーで診療するときのポイントについて,広島大学・中島祐子先生のご教示をお願いします。
【質問者】
高橋 周:東あおば整形外科院長

【A】

近年の超音波装置の進歩,高周波プローブの出現により,指のような非常に浅い,そして小さい組織の鮮明な画像の描出が可能となりました。
日常よく遭遇する手指の外傷として,いわゆる「突き指」があります。靱帯損傷,腱損傷,掌側板損傷,骨折や脱臼などが含まれますが,中でも側副靱帯,腱,掌側板のような軟部組織は単純X線では評価ができません。「骨には異常ありません」と言われ,適切な初期治療が行われずに,後に治療に難渋することもあるので,超音波による軟部組織の評価は大切です。
指の関節の側副靱帯は関節の橈側,尺側にそれぞれあり,PIP関節では基節骨頭中央から中節骨基部掌側に向かって走行しています。検査で皮膚直下に見たい組織がある場合,プローブを皮膚に押しつけて観察すると,きれいな画像が得られません。焦点距離を保つためにプローブと皮膚の間に距離を持たせるのがコツです。そのためには硬めのゼリーを厚めに使用するか,もしくはゲルパッドのような製品の使用をお勧めします。
正常の側副靱帯は長軸でfibrillar pattern(線状高エコーの層状配列)を呈し,基節骨と中節骨の付着部のくぼみに収まっているように見えますが,損傷すると,靱帯がくぼみからはみ出すように腫脹してfibrillar patternが不明瞭となります。靱帯を見ながら側方ストレスをかけて,どの部位が損傷して関節が不安定になっているかを判断することができます。
また,母指のMP関節尺側の側副靱帯損傷のうち,断裂部が内転筋腱膜に引っかかり整復できない病変はStener lesionと呼ばれており,団子状もしくは反転した靱帯断端として見えます。本病変では手術が必要となるため,診断価値が高いと言えます。
槌指を呈する伸筋腱損傷も比較的多くみられます。プローブと皮膚の間に距離を保ちながら指の背側にプローブを置くと,末節骨から連続する伸筋腱が細い高エコーの線として見えますが,腱性槌指ではこの線が途切れて見えます。他動的に屈伸すると腱の末梢断端のみが動きます。
ジャージーフィンガーと呼ばれる損傷は,通常環指の深指屈筋腱の引き抜き損傷です。指の掌側長軸にプローブを当てると,末節骨に停止しているはずの深指屈筋腱が付着部で断裂し,退縮しています。エコーでは退縮した屈筋腱の断端が確認できます。腱の断端は太く,fibrillar patternが不明瞭となります。
最後に掌側板損傷です。多くはPIP関節で起こり,小さな剥離骨片を伴っていることもあります。掌側板は線維軟骨のためやや高エコーで,長軸では中節骨基部から基節骨頭掌側に続く三角形に見えます。エコーでは損傷部位や,損傷した掌側板が指屈伸時に不安定かどうかを動的に確認することができます。
「エコーなんか見なくてもわかる」と思っている人も多いようですが,「見えるからわかる」ことがたくさんあります。指の外傷においても,エコーを使うことによって診療を進化させることができるのです。

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