株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

自閉スペクトラム症[私の治療]

No.5195 (2023年11月18日発行) P.56

石井礼花 (国立精神・神経医療研究センター知的・発達障害研究部発達機能研究室室長)

登録日: 2023-11-21

最終更新日: 2023-11-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 発達早期から以下の症状が存在し,発達に応じた対人関係や学業的,職業的な機能が障害され,知的発達症のみで説明できないとき,『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』1)に基づいて診断される。
    ・多様な文脈における対人コミュニケーションと対人相互作用の持続的障害(人との相互的なやりとりが不得手で,非言語的コミュニケーションや対人関係の構築,維持,理解が難しい)
    ・限局的反復的な行動,関心,活動(興味,関心,活動が限局,常同性への固執,言語的・非言語的行動の習慣・儀式的パターンへの固執,強度または対象が通常と異なる高度に限局された固定的関心,感覚入力への過敏・過少な反応,環境の感覚的側面への異常な関心)

    ▶診断のポイント

    うつ症状や不安,不眠,友人とのトラブル,不登校,家庭での問題などの主訴で医療機関を受診する場合もあり,幼少期からのエピソードを養育者から詳しく聴き,前述の症状があるかどうかも検討する。スペクトラムであるため,症状の重症度は様々である点にも注意が必要である。日本の学童における有病率は1.76%と身近な障害で2),日常診療でも日々遭遇する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方・治療の実際

    個々人によって症状も様々で,本人とその成長に合った治療計画を探していく必要がある。治療や支援と診断は一体であり,診断をすること=サポートを開始することでなければならない。以下に,ライフステージごとに起こりやすい問題と治療を述べる。

    【乳幼児期の問題】

    発達の遅れや質的な相違があり日常生活技能の獲得に工夫が必要である。特性による養育の困難さから,養育者のメンタルヘルスや愛着形成に影響が及ぶ場合もあるため,養育のサポートが必要である。支援,治療としては,乳幼児健診におけるハイリスク児の発見・フォローを行い,乳幼児の発達評価と養育者の状況の把握をする。保健師による養育支援,児童相談所との連携を行い,市町村における発達支援(療育)につなげる。小集団での日常生活技能と対人スキル獲得,養育者への相談・支援活動,経済的支援,特別児童扶養手当の支給などにつなげる。保育所・幼稚園では,障害特性に応じた支援,加配職員の配置などを依頼する。日本での療育技法としては以下があり,その地域でアクセスできる資源を用いることとなる。

    ①TEACCH(treatment and education of autistic and related communication handicapped children):米国ノースカロライナ州で開発された療育プログラム(視覚化,スケジュール,時間と環境の構造化等の環境づくり)

    ②ABA(applied behavior analysis,応用行動分析):米国西海岸で広く実施され,効果が最も実証されている行動療法理論に基づく療育プログラム

    ③PECS(picture exchange communication system):内発的なコミュニケーションを重視,絵カードと交換し要求されたものを渡す

    ④感覚統合など

    残り1,019文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top