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発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)[私の治療]

No.5161 (2023年03月25日発行) P.48

神野哲也 (獨協医科大学埼玉医療センター整形外科主任教授)

登録日: 2023-03-23

最終更新日: 2023-03-20

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  • 発育性股関節形成不全は,乳児の大腿骨頭が関節包内で脱臼・亜脱臼している状態(かつての先天性股関節脱臼)や,関節不安定性を惹起する寛骨臼形成不全などの股関節形態異常を包括した概念である。男女比は1:5~9で女児に多い。

    ▶診断のポイント

    【一次スクリーニング】1)

    ①股関節開排制限,②大腿・鼠径の皮膚溝非対称,③股関節疾患の家族歴,④女児,⑤骨盤位分娩,のうち,①または②~⑤の2つ以上が精査対象である。開排制限は開排角度(股関節屈曲90°での外転角度)≦70°が目安であるが,>70°でも左右差がある例や過開排例は含める。開排制限は向き癖側の反対側に生じやすい。皮膚溝は,両下肢伸展位で前方から,開排位で尾側から観察する。

    【身体所見】2)

    上記①②のほか,患側下肢の短縮(Allis徴候),開排位での大転子位置異常(脱臼側では大転子が坐骨より後方),開排・内転操作での整復・脱臼に伴うクリックなど。歩行開始後は,脱臼側の下肢短縮やTrendelenburg歩行など。

    【検査所見】2)

    単純X線:正しい両股関節正面像が必須である。乳児期には各種補助線(Hilgenreiner線,Ombrédanne線,Shenton線,Calvé線)を用いて評価する。寛骨臼形成不全は寛骨臼角≧30°などで診断する。

    超音波断層像:側方からのGraf法は重症度を含めた診断と治療方針決定に,開排位前方法は寛骨臼と骨頭との前後関係把握や,装具治療中の経過観察などにも有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    全例に育児指導を行い,3~4カ月以降の脱臼例にはRiemenbügel装具(Rb)治療を行う。例外は発見遅延例と高位脱臼例,および奇形性脱臼などの特殊例である。

    脱臼のない寛骨臼形成不全の場合は,乳児期の育児指導と成長終了までの検診を原則とし,経過中に寛骨臼形成不全が問題となれば手術治療を考慮する。

    究極の治療目標は,将来変形性股関節症を生じない,正常な股関節に発育させることである。そのため乳幼児期には,大腿骨頭を,壊死をきたすことなく,寛骨臼内の正しい位置に整復することが必要となる。

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