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頸椎後縦靱帯骨化症[私の治療]

No.5136 (2022年10月01日発行) P.44

吉井俊貴 (東京医科歯科大学整形外科学准教授)

登録日: 2022-10-03

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  • 後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament:OPLL)は,椎間板の背側で脊椎椎体の後縁を連結する後縦靱帯が骨化・肥厚することにより脊椎管の前方から狭窄をきたし,脊髄または神経根の圧迫障害をきたす疾患である。頸椎OPLLは,男女比約2:1で男性に多く,40歳以上の中高年に好発する。OPLLは黄色靱帯骨化症とともに厚生労働省の指定する指定難病とされている。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    画像上OPLLを認めるものの無症状であることも多い。圧迫性脊髄障害の病理は,白質における側索の脱髄を中心とする脊髄伝導路の障害(long tract sign)と灰白質における前角細胞の変性,壊死に伴う脱落症状(segmental sign)を主とする。神経根症を呈する症例では,頸部痛,肩甲部痛,上肢痛が出現し,徐々に障害神経根領域のしびれ,筋力低下,知覚障害が生じる。脊髄の前角障害や神経根障害もしくはその複合で,知覚障害がないか,ごく軽度で筋力低下が主たる障害となる病態も存在する。

    【検査所見】

    局所所見:連続型,混合型のOPLLなどでは可動域が制限される。頸部の屈曲,伸展などで,神経根症では頸部,肩甲部,上肢への放散痛などを伴うことが多く,脊髄症では上下肢に放散する痛みやしびれを伴うこともある。

    神経学的所見:脊髄症を呈する症例では障害髄節の深部腱反射の減弱,筋力低下,知覚障害,索路徴候としてHoffmann徴候の陽性,下肢腱反射亢進,知覚障害,膀胱直腸障害などがみられる。神経根症を呈する症例では,Jacksonテスト,Spurling テストの陽性所見,神経根障害に伴う深部腱反射の減弱,筋力低下,分節性知覚障害などがみられる。

    【画像所見】
    〈単純X線〉

    側面像で椎体後縁に接する後縦靱帯の骨化像がみられる。ただし,上位胸椎や骨化巣が小さい場合,他組織の陰影と重なっている場合などは正確な読影は困難であることも多く,CT画像も参考にするべきである。骨化の形態によって連続型・分節型・混合型・限局型に分類される。

    単純CT,脊髄造影後CT:CTは骨化巣の評価に有用である。ただし,単純CTでは脊髄・神経は描出されないため,神経圧迫の程度を評価するためには脊髄造影後CTやMRIが必要である。再構成画像は骨化の連続性の評価に有用である。

    〈MRI〉

    靱帯骨化巣による脊髄・神経の圧迫がみられる。ただし,単独では圧迫病変が骨化であるかどうかの判別は困難であるため,靱帯骨化の最終診断にはCTとの組み合わせが必要となる。脊髄圧迫像に加えてT2強調画像における髄内輝度変化などを参考にする。

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