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骨髄炎[私の治療]

No.5047 (2021年01月16日発行) P.43

豊永真人 (関東労災病院整形外科・脊椎外科)

山田浩司 (関東労災病院整形外科・脊椎外科副部長)

登録日: 2021-01-18

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  • 骨髄炎(osteomyelitis)の感染経路は,主に血行性か直接的な浸潤で,経過から急性か慢性に分類される。小児では骨端線が閉鎖しておらず,長管骨に発症することが多い。成人では椎体炎,外傷や手術に伴う骨髄炎,糖尿病や末梢循環不全に伴う骨髄炎が多い。

    ▶診断のポイント

    急性例では,発熱,全身倦怠感などの全身症状,急な痛み,圧痛,紅斑,熱感,腫脹などの局所所見を認めることがある。小児では,患肢の機能障害(上肢であれば使いたがらず,下肢であれば跛行や歩行困難)を呈することがある。単純X線像での変化は発症後10日以上かかる。MRIは陽性尤度比が高く,骨シンチグラフィーは陰性尤度比が高い。CTの有用性はX線以上,MRI以下である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性骨髄炎は抗菌薬投与が,慢性骨髄炎は手術加療が優先される。原因菌同定が最も重要で,抗菌薬投与前に必ず血液培養を2セット以上,可能であれば病変部より検体を直接採取する。デブリードマン可能な部位は速やかに行う。膿瘍や腐骨は,可能な限りデブリードマンする。

    抗菌薬は通常,長期投与となる。経口投与は用量不足となるため,経口抗菌薬で治療を開始することは推奨されない。また,外来での不用意な経口抗菌薬投与は,原因菌同定の妨げになるので控える。抗菌薬投与期間は6週間程度を1つの目安とするが,科学的根拠は十分でない。投与期間は原因菌,感染の広がりとデブリードマンの程度を考え,総合的に判断する。抗菌薬は,原因菌同定後de-escalationする。投与量は保険収載されている投与量と各種ガイドラインで推奨される最大投与量を参考に,なるべく高用量にする。セフェム系抗菌薬の多くは骨移行性が悪いので,注意が必要である。

    【手術療法】

    骨髄炎の手術加療の原則は,感染制圧のための病巣の徹底的な搔爬切除と骨欠損の再建である。不十分な搔爬切除は感染が再発し,骨切除範囲の拡大や多数回手術による周囲軟部組織の血流悪化をまねくため,注意が必要である。搔爬範囲は,術前の骨シンチグラフィーやMRIなどの画像所見も参考に,術中にpaprika signがみられる範囲まで十分に骨切除を行う。軟部組織の汚染に対しては,ピオクタニン(塩化メチルロザニリン)を創部や瘻孔から注入し,濃染した部分を中心に切除を行い,血流や色調をみながら切除範囲を決定する。骨髄炎(感染性偽関節を含む)を単純な骨欠損の状態にすることが重要である。

    骨欠損の再建法は,Ilizarov法(bone transport,shortening-distractionなど),Papineau法,Masquelet法,血管柄付き骨移植など様々である。骨欠損範囲や軟部組織の状態,患者背景など個々の症例に応じて決定するが,「強固な固定力」は感染制御にも骨再建にも有利であり,当院ではリング型創外固定器を積極的に使用している。内固定材は異物であり抜去を要することが多いが,近年iMAP/iSAPといった高濃度抗菌薬局所投与により,内固定材を温存したまま感染を制御できたとの報告もあり,注目されている。

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