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悪性骨腫瘍[私の治療]

No.5039 (2020年11月21日発行) P.45

尾﨑敏文 (岡山大学病院整形外科教授)

登録日: 2020-11-22

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  • 原発性悪性骨腫瘍は,全悪性腫瘍の約0.2%程度であり,希少癌に属する。日本整形外科学会の全国骨腫瘍登録一覧表における,2017年度の原発性悪性骨腫瘍の登録総数は604例で,組織型は骨髄腫,悪性リンパ腫を除くと,多い順に①骨肉腫,②軟骨肉腫,③ユーイング肉腫,④脊索腫,⑤悪性線維性組織球腫(骨未分化高悪性度多形肉腫,undifferentiated high-grade pleomorphic sarcoma:UPS)であった1)。化学療法が一般的に行われる腫瘍は骨肉腫,ユーイング肉腫である。多くの症例で局所治療として腫瘍切除が必要であり,広範切除が標準治療である。切除不能症例には,粒子線治療が承認されている。一方,転移性骨腫瘍は,原発性悪性骨腫瘍よりはるかに多く発生する。特にがんの既往歴がある患者では,転移性骨腫瘍の発生に気をつけ,骨折や脊髄麻痺に対する迅速な対応が必要である。

    ▶診断のポイント

    原発性悪性骨腫瘍のうち,骨肉腫やユーイング肉腫は10歳代の小児に好発する。転移性骨腫瘍は50歳代以上,いわゆるがん年齢に好発する。骨肉腫は,四肢長管骨骨幹端(特に大腿骨遠位,脛骨近位,上腕骨近位)部に好発する。一方,軟骨肉腫やユーイング肉腫は,四肢の長管骨骨幹部などのほかに,骨盤など体幹の骨にも高い比率で発生する。悪性骨腫瘍の四肢発生例では疼痛や腫脹,脊椎発生例では疼痛,脊髄麻痺などの症状を呈する。まずは単純X線検査が重要であり,質的診断に関しては,他の画像検査より情報量は多い。

    腫瘍の局在診断には単純X線・CT検査,MRI検査が有用である。これらの画像所見は,悪性骨腫瘍と良性腫瘍との鑑別にも参考となる。原発性悪性骨腫瘍の単純X線検査では,骨破壊(地図状パターン,虫食い状パターン,侵食状パターン)や骨硬化像,さらに特徴的な骨膜反応(sunburst appearance,spicula,Codman三角,onion skin appearanceなど)が出現する。転移性骨腫瘍では,骨硬化像は前立腺癌や治療中の乳癌などで認められる。溶骨性変化は肺癌,腎癌,甲状腺癌などに多い。骨転移の検出には,骨シンチグラフィーが有用である。MRIは,腫瘍の進展範囲が把握でき,手術計画を立てるのに必須である。

    血液生化学検査においては,骨肉腫では血清アルカリホスファターゼ値が上昇する。またユーイング肉腫では,炎症反応が上昇することがある。がんの骨転移では,各種がんで検出されるCEAやPSAなどの上昇が認められる。

    骨・軟部腫瘍の最終的な確定診断は,病理組織診断により行う。特に原発性悪性骨腫瘍の診断は切開生検にて行う。近年,ユーイング肉腫のEWSR1-FLI1やEWSR1-ERGなど,染色体転座による腫瘍特異的なキメラ遺伝子が同定されており,補助診断として非常に有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    小児・若年者の骨肉腫では,術前・術後抗癌剤化学療法と広範切除が標準治療である。ユーイング肉腫には,抗癌剤化学療法と手術に加えて,放射線治療を行うことも多い2)。適切な広範切除による局所制御率は約90%で,患肢温存率は80%以上である。局所進行例は切断,離断術が必要となる場合もある。

    低悪性度骨腫瘍は,既存の薬物療法や放射線治療の感受性が低く,標準治療は外科的切除のみである。近年,脊椎や骨盤(特に仙骨)原発などの切除不能の悪性骨・軟部腫瘍に対する,炭素イオン線を用いた重粒子線治療の有効性が報告されている。切除不能と判断された脊椎発生の骨肉腫,手術による切除機能障害が著しく合併症も多い仙骨脊索腫(特に高齢者)などは,重粒子線治療のよい適応とされる。また,小児がん(限局性の固形悪性腫瘍)では,陽子線治療が承認されている。

    四肢の患肢温存手術では,切除後の広範な骨欠損の再建には腫瘍用人工関節が最もよく用いられるが,各種処理骨や血管柄付き骨移植を用いた再建も行われている。

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