株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

外傷性頸部症候群[私の治療]

No.5032 (2020年10月03日発行) P.49

遠藤健司 (東京医科大学整形外科学分野准教授)

登録日: 2020-10-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • むち打ち損傷では,軽微な外傷にもかかわらず長引く疼痛性障害に悩まされることがある。起立性頭痛などがない場合は,可及的に安静・不動化を排除して早期に社会復帰を促すことで,慢性疼痛に移行することを避けるべきである。

    ▶診断のポイント

    外傷性頸部症候群は,衝撃,加速度など介達外力によって様々な症状をもたらす症候群であり一様でない。疼痛部位や症状によって治療方法を選択することが重要である。多くの場合,骨折も脱臼もしていない外傷性頸部症候群は,けがの中でも軽症の部類に入る。しかしその一方で,痛みやしびれなどの症状がなかなか改善されず,難治化・慢性化するケースも知られている。それを予防するためにも,「早期に適切な治療を受ける」だけでなく,「セルフケア」もとても重要である。痛みの慢性化には「ストレス」と「不動化」が関係している。ストレスとは,精神と身体にかかった負荷のこと,一方の不動化とは,長時間にわたって同じ姿勢を続けることを指す。当然ながら交通事故に遭えば,それ自体がストレスになるが,不動化は自身の取り組み次第で予防が可能である。

    そして,この不動化に陥らないために行いたいのが,セルフケアである。前屈位の姿勢を続けないこと,および全身運動が重要である。ウォーキングや軽いストレッチなどは,電気治療や牽引による物理療法より効果が高いというエビデンスも出ている。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    症状より病態を整理する。
    ①頸椎捻挫型:首痛や張り,肩こりなど。

    ②神経根型:首と腕,肩甲骨の痛みとしびれ。しびれは首を動かすと強まり,手や指の感覚が鈍くなる。

    ③脊髄症型:症状は四肢に及び,反射が亢進する。

    ④バレー・リュー型:首痛,頭痛,めまい,吐き気,不安感,不眠など自律神経症状が主である。

    ⑤胸郭出口症候群型:首痛,片方の腕にしびれと冷感。

    ⑥脳脊髄液減少症型:起立性頭痛(横になると楽になる),微熱,めまい,吐き気,集中力低下,記憶力障害など。

    事故状況と,疼痛部位,程度の記録は重要である。起立性頭痛,めまいなど自律神経症状の有無は問診する必要がある。疼痛が遷延化し複数診療機関での加療となった場合に,外傷との因果関係を証明するための重要な証拠となる。

    検査の組み立て方としては,頸部に運動時痛,四肢神経症状がある場合は,脊椎帯骨化症など頸椎基礎疾患の有無をみるために頸椎X線像(正面,側面,側面前後屈)を撮影する。経時的に症状の改善を認めない場合は頸椎MRI,頭痛・起立性頭痛が存在する場合は脳脊髄液減少症を疑い,脳の造影MRIが必要となる。

    残り1,330文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・整形外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療体制の救急告示病院として救急患者を受け入れています。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問診療、訪問看護、訪問介護体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top