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特集:クリニックにおけるリアルな腰痛診療

No.5008 (2020年04月18日発行) P.18

井尻慎一郎 (井尻整形外科院長)

登録日: 2020-04-17

最終更新日: 2020-04-15

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1982年大阪医科大学卒業。大阪医科大学一般・消化器外科学教室を経て,1984年京都大学医学部整形外科学教室入局。1994年神戸市立医療センター中央市民病院整形外科。2000年より現職。

1 腰痛とはどのような病態と考えて診断と治療をするか
腰痛の考え方を従来の病気別とはガラッと変わった方法で説明する。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などと個別に説明するよりも,まずは「腰痛とはどのような病態と考えて診断と治療をするか」といったアプローチのほうが腰痛の本質に近づけると考える。
本稿が従来の腰痛解説書と一番異なる点は,腰痛と神経痛をわけて考えることである。もちろん,腰痛と神経痛が密接に絡むこともあるが,この2つは治療法がかなり異なるため,別々に治療を考えるほうが治りやすい。さらに,まずは見逃してはならない疾患を鑑別した後に急性と慢性にわけて考える。急性腰痛と慢性腰痛では原因も治療もガラッと異なるからである。

2 診断前に,腰痛をきたす重大な疾患を知って見逃さない
危険信号(red flags)を見逃さない。がんの転移や内臓疾患,婦人科系・泌尿器科系の疾患,特に見逃されやすい,腹部大動脈瘤や解離性動脈瘤に注意する。

3 急性腰痛の特徴と診断法,治療法を知る
急性腰痛の中にはケガによる外傷と使い過ぎなどの炎症の2種類があり,微妙に対応法が異なる。また,以下が治療法として重要である。
(1)安静にしない
「腰痛診療ガイドライン2012」で急性腰痛に対して安静にしないで活動性を維持するほうが早く治るとされて,パラダイムシフトが生じた。
(2)初めから温める
「腰痛診療ガイドライン2012」「腰痛診療ガイドライン2019」で急性腰痛は冷やすよりは温めたほうがよいとされた。
(3)運動を勧める
急性腰痛でも少しずつゆっくり体操をしていくほうが早く治る。

4 慢性腰痛は心理的要素が少ない場合と多い場合にわけて診療する
教科書ではほとんど記載されていない,疲労性腰痛や姿勢性腰痛を診断し対応する。原因不明の非特異的腰痛にはこの2つの腰痛が含まれている可能性が大きい。
心理的要素が多い場合は,心療内科やカウンセラー,産業医などと連携して総合的に治療をしていく。思い込みは一種の精神的要素ではあるが,自ら気づいてもらう以外,なかなか周りが是正することは難しい。

5 腰痛は運動療法が大事なのに対し,神経痛は薬物療法が主体
腰痛はたとえば体操などの運動療法や生活習慣の改善,職場での環境改善などが重要な治療法となるが,神経痛はほぼ純粋に薬剤を上手に使用することが原則になる。

6 鎮痛薬の分類と使いわけを知る
「腰痛診療ガイドライン2019」でも示されているように,急性腰痛と慢性腰痛での第一選択薬が異なる。鎮痛薬の中で局所の炎症を抑える効果があるのは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)だけであり,他の薬剤は脊髄や脳で鎮痛効果を発揮する薬であることを知る。
また,疼痛そのものの考え方もガラッと変わり,慢性疼痛の概念,神経障害性疼痛の概念が確立されつつある。従来の急性疼痛,いわゆる炎症性や外傷性の疼痛に対するNSAIDs一辺倒の治療では対応できないことがわかり,慢性疼痛治療薬や神経障害性疼痛治療薬を数種類使えるようになっているが,まだ臨床現場ではその分類や使い方に混乱がみられる。

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